Original Works 『Kanon』



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 Kanon Short Story






 「くそっ、相沢の奴……ハーレムか!」

 「私の佐祐理さんが……おのれ相沢!」

 「美坂のナース姿……ぐはっ」

 「佐祐理さんのナース姿、しかもうさ耳まで……ぐはっ」

 「「生きてて良かった〜」」

 「しかし他の女の子たちも! おおっ、メイドに巫女に……って体操服着てるの秋子さん!?」

 「どうした我が下僕北川、体操服ぐらいで……おおうっ!?」

 「……………………」

 「……………………」

 「「ぐはぁ〜」」

 だばだばだばだば。

 「いかん! 鼻血を出している場合じゃない!!」

 「何という色っぽさ……すまない佐祐理さん、つい目が行ってしまいました」

 「所で久瀬、さっき気になる発言が有った気がするが?」

 「気にするな北川、ただの言葉のあやだ」

 「そうか?」

 「そうだ」

 「「はっはっはっはっは〜っ」」

 「あっ、秋子さんが子供たち連れて隣の部屋に移動したぞ」

 「子供たちの教育に良くないと判断したのだろう」

 「さすが秋子さん、賢明な判断だ」

 「うむ、人の親とはあの様に有りたいものだな」

 「それに引き替え相沢は……あれでも二人の娘を持つ父親か?」

 「まったくだ、奥さん目の前で他の女の子とべたべたして……」

 「ちょっとまて久瀬!」

 「なんだ我が永遠の忠実なる下僕北川よ?」

 「誰が下僕だ? それはともかく美坂の事を奥さんと呼ぶな! 俺の中ではまだ美坂なんだ!」

 「どっからどう見ても新婚で若夫婦な感じだが?」

 ばきっ。

 「そんな事言ったら、殴るぞ?」

 「殴ってから言うな!」

 「とにかくだ、秋子さんがいない今がチャンスだと言う事だ」

 「いきなり話をそらしたが、まあ北川の言うとおり今を置いてない」

 「うむ、今こそ美坂を我が手に、そしてあの美坂似の双子の父親に!」

 「そうだ、相沢には望みがないと解らせて今こそ佐祐理さんをこの手に!」

 「「おーっ!!」」








 かおりんの夢は止まらない♪ 第六話






 Presented by じろ〜







 ぴんぽ〜ん。

 「誰かしら、こんな時間に?」

 「あー、俺が出るからいいよ」

 「ごめんね祐一、今ちょっと手が離せないから……」

 「うぐぅ、離してよ香里さん〜」

 「うにゅ、離して香里〜」

 「お黙り、今日のあたしは手加減しないわよ、おーほっほっほっ」

 「奥さまから女王さま?」

 「あはは〜、香里さんぴったりです〜」

 「そこの二人も後でお相手するわよ」

 「ぽんぽこたぬきさん」

 「ふえ〜、それは遠慮します〜」

 あゆちゃんと名雪の頭を掴んだまま舞さんと佐祐理さんを睨む……なんか今日のあたし変かしら?

 ただ、今すっごく気分が良いのよねー、もしかして酔ってる?

 そんな事無いわね、謎ジャムで鍛えたこの体がアルコールぐらいでねぇ……。

 「ジャムとアルコールは同時に服用してはいけませんよ」

 「あ、秋子さん?」

 辺りを見回すが秋子さんの声はしたけど姿はいない、空耳かしら?

 う〜ん、確かに薬にもなるから、ひょっとしたら拙いわね。

 「うぐぅ、頭裂けちゃうよ〜」

 「うにゅ、頭割れるよ〜」

 「あ、すっかり忘れてたわ、ごめんなさい、あゆちゃん、名雪」

 ぽいっ。

 ごんがん。

 「うぐぅ」

 「うにゅ」

 いけない、立ち上がっていた事忘れてたわ……床に顔面ぶつけて痙攣してるわね

 まあ気絶しちゃったけど、このままでもいいわね。

 「怖い佐祐理」

 「ふえっ、佐祐理も怖いです」

 「何もそんなに怯えなくても……そう言えば祐一はどこに行ったのかしら?」

 そう言ってちびちび飲んでいる美汐さんと合流して、みんなしてあたしの方を見ながらひそひそ言ってるし。

 「言いたい事があるならどうぞ?」

 でもみんなはあたしから目を反らすとまたひそひそモードで話し始めた。

 軽くため息をつくと、腰を下ろしてあゆちゃんと名雪のほっぺたを突いて遊ぶ。

 ぷにぷに。

 「二人とも娘と同じで柔らかいわね、それに肌がすべすべだわ」

 うーん、何か忘れている様だけど……あれ?

 「もう祐一ったら何してるのよ、あたしを置いてくなんて良い度胸ね」

 なんかふらふらするけど、祐一を求めて玄関によたよたと歩いていった。

 「……香里、酔ってる」

 「あはは〜、飲み過ぎはダメですよ〜」






 「何しに来たんだお前ら、しかもこんな時間に?」

 「何しに来たとはご挨拶だな、一応親友としては退院祝いに来たつもりなんだが?」

 「誰が親友だ、まあ知り合いとしてなら解るが……久瀬、お前は?」

 「私も社会人だからな、一応礼儀ぐらいは知ってるつもりだ」

 「なるほど、それはわざわざ済まない、でもこの通り元気だから気遣いしなくてOKだぞ」

 「つれないなぁ〜相沢、それでも親友か?」

 「せっかく様子を見に来たのに、私たちこのまま追い返すつもりか?」

 「おうっ、今日はちょっと来客が多くて相手ができんのだ」

 「まあまあ、そう言うなって……」

 「そうだ、私たちの気持ちを無下にすることは無いだろう」

 「お前ら何勝手に上がり込もうとしてるんだ?」

 「「まあまあ」」

 「こらっ、人の家に無理矢理上がり込むなんて……あなたたち、悪質なセールスマンね!」

 「香里?」

 「美坂……ぐはっ!?」

 「どうした下僕、傷は浅いぞ?」

 あたしを見ながら祐一は困った顔で、後の二人は鼻血を出してもう一人が介抱していた。

 「そこのセールスマン、いきなり鼻血出して玄関汚すの止めてくれないかしら?」

 「香里、お前酔ってるな?」

 「どこが?」

 「どこがって、こいつら誰だか解らないのか?」

 あたしは玄関にいる二人をじ〜っと見るけど、記憶の片隅に引っかかっている顔だとしか思い出せなかった。

 「相沢、こいつらとは心外だぞ!」

 「そうだ、下僕と一緒にするな!」

 「誰が下僕だ、誰がっ?」

 「あ〜、もうっ五月蠅い〜っ! 何も買わないから帰れー!」

 「落ち着け香里、もうお酒は飲むんじゃない」

 暴れるあたしを祐一が後ろから優しく抱きしめて支えてくれる、なんだか凄く温かくて安心する。

 「はふぅ〜、ねえ祐一……」

 「ん?」

 「あたしの事、愛してる?」

 「ちょっとまて、ここじゃなんだから……」

 「ぐすっ……愛してないんだ、すん」

 「そんな事ないって、愛してるぞ」

 「む〜、気持ちがこもってない! もっとちゃんと言って!」

 「いや、だから……」

 祐一の腕の中でくるりと向きを変えると、あたしは顔を見つめながらもう一度言う。

 「あたしの事、愛してる?」

 「あ、うん、愛してるぞ、香里」

 「ホント?」

 「嘘じゃないって」

 「じゃあキスして!」

 「えっ、それは……」

 なんか汗を流して困った表情の祐一が無性に可愛かったから、もっと体を押しつけちゃう。

 「祐一……」

 目を閉じて祐一のキスを待とうとしたら、変なうめき声が後ろから聞こえてきた……もうっ、台無し!

 「あ・い・ざ・わ〜……今日という今日は許さん! お前を倒して美坂を我が手にーっ!!」

 「ふん、相沢さえいなくなれば佐祐理さんは我が手にーっ!!」

 「拙い、このままじゃ香里が巻き添えに!?」

 「あらあら、夜も遅いので騒ぐのはいけませんよ」






 「秋子さん……ってなんです、そのデジカメは?」

 「ふふふっ、気にしないでください」

 「いや、めちゃめちゃ気になるんですけど……」

 「逃がす物か、相沢ーっ!!」

 「そうだ、このチャンスを逃してなる物かーっ!!」

 「お待ちなさい、あなた達の相手は私と言いたいですが、祐香ちゃん、祐理ちゃん?」

 「「はーい」」

 「ちょっと秋子さん、いくらなんでも娘たちじゃ!?

 「ふん、子供ごときに負ける俺じゃないぞ!」

 「「おじさんたち、わるい人?」」

 「「誰がおじさんだーっ!!」」

 「おまえら」

 「舞?」

 「「舞おねーちゃん」」

 「遅れて済まない、祐一、祐香、祐理」

 「ナイスタイミングだ、舞!」

 なんか騒がしいわね〜、気持ちよく寝たいんだから静かにしてくれないかしら……。

 「さあ祐一さん、ここは任せて香里さんを寝かせて上げてください」

 「すいません、後は頼んだぞ舞」

 「はちみつクマさん……ぽっ」

 「祐香も祐理も危なくなったら逃げるんだぞ?」

 「「うん、わるい人やっつけるー!!」」

 そんな会話が耳に聞こえてきたけど、どうしようもなく眠くてそれからは何も覚えていない。

 ただ、祐一に抱かれている心地よさだけが、あたしの心に伝わってきた。

 「ま、まて、川澄さん、話せば解る」

 「お、おまえら、美坂そっくりの顔でその謎ジャムを持ってくるなー」

 「覚悟完了?」

 ちゃきっ。

 「「かんりょー?」」

 じゃむじゃむ。

 「舞さん、祐香ちゃん、祐理ちゃん、悪い人たちをやっつけましょう♪」

 「はちみつクマさん!」

 「「りょうしょー!」」

 「「ぎゃーっ!?」」

 そしてあたしが眠っている間に、我が家に訪れた驚異は通り雨の様に過ぎ去っていったようだわ。






 「う〜ん、いい朝♪」

 ベッドの中で体を起こして腕を伸ばすと、着替えようとして自分を見ると何故か下着姿だった。

 「あれ? 確か昨日ナース服だった記憶が……」

 思い出そうとして意識を集中しようとしたら、リビングの方から大きな歓声が聞こえた。

 「もう朝からまた名雪がテレビでも見て騒いでるのね、しょうがないわね……」

 とにかく着替えてリビングにいったあたしを待ち受けていたのは、恥ずかしい映像だった。

 『はふぅ〜、ねえ祐一……』

 『ん?』

 『あたしの事、愛してる?』

 『ちょっとまて、ここじゃなんだから……』

 『ぐすっ……愛してないんだ、すん』

 『そんな事ないって、愛してるぞ』

 『む〜、気持ちがこもってない! もっとちゃんと言って!』

 『いや、だから……』

 『あたしの事、愛してる?』

 『あ、うん、愛してるぞ、香里』

 『ホント?』

 『嘘じゃないって』

 『じゃあキスして!』

 ……………………。

 「いやーっ、何見てるのよあなた達ーっ!?」

 「「ママ、おはよー」」

 「「「「「「「おはよう〜、香里(お姉ちゃん、さん)」」」」」」」

 「おはようございます、香里さん」

 「な、何よこれ? 誰が作ったのよ!」

 「落ち着け香里」

 あたしの側に祐一が頭を押さえながら近寄ってきたので、思わず掴みかかってしまった。

 「祐一、いったいアレは何なのよー?」

 「覚えてないのか、昨日の夜の事?」

 「昨日の夜?」

 う〜ん……思い出せない、ナースの格好したまでは覚えているんだけど、いったい何があったのかしら?

 「その様子じゃ覚えてない様だなぁ」

 苦笑いする祐一はあたしの肩をぽんと軽く叩いて笑っていた。

 「ごめんなさい、でもそうするとあの映像は……」

 「はい、私がばっちり録画しておきました♪」

 「さらっと楽しそうに言わないでください、それより早く消してください!」

 「「ママ、かわいーよー」」

 「はうっ」

 ああ、そんな嬉しそうに……それにその笑顔であたしを見つめないで〜。

 「諦めろ香里、それとお酒と謎ジャムは一緒に食べるのは止めような」

 その後、この映像が元で暫く名雪たちにたかられるのは、悔しいぐらいにお約束だったわ。






 あ、みんなも止めた方が良いわよ、謎ジャムとお酒の取り合わせはね……はうっ。






 つづく。




 どうもー、じろ〜です。

 前後編になりましたが、酔った香里が可愛く思えました。

 しかし舞はともかく、こんな小さい内から謎ジャムを使いこなす辺り、末恐ろしいです。

 これも秋子さんと香里ママの謎ジャムマスターの教えですね。

 北川と久瀬、この二人嫌いじゃないのですが……このお話ではいい役無いです、なむー。

 さて、相沢家を中心に続いているお祭り騒ぎにも、少し変化が出てきそうです。

 その中でみんなの心に何かが生まれ、そして何かが変わって来る気配が……。

 祐一の家族に対する思いと愛情は、名雪たちに半歩踏み出す決心をゆっくりと迫っていた。

 でも、彼女たちの中であゆが一番最初に歩き出す。

 少ししんみりホームコメディ。

 かおりんの夢は止まらない♪第七話「ありがとう祐一くん、大好きだよ!(byあゆ)」

 次回はあゆあゆがサービス、サービスぅ♪

 

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