Original Works 『Kanon』



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 Kanon Short Story






 つ、疲れたわ。

 もう寝ていいかしら?

 ………………。

 冗談よ、ただ精神的に大ダメージは確かね。

 もうっ、うちの娘たちは可愛い過ぎちゃって……むっ?

 悪かったわね、どうせ親ばかよ。

 でもね、本当にすっごく可愛いんだから、嘘だと思うなら自分で娘作ってみなさい!

 あ、なんか凄い事言っちゃった様な気がするけど、話を戻すわ。

 あれから娘たちに大きくなったら教えて上げると言って誤魔化したけど、名雪たちはぶーぶー言って

 追求してきたけど有る物を条件にそれを逃れた。

 それは良かったんだけどあたしは自分の姿を見て、なんでこんな事しちゃったのか後悔していた。

 いくら交換条件とはいえ、これを着てしまったあたしって何?

 「「ママ、かっこいいー」」

 「あ、ありがと……」

 ああ〜、だからそんな無邪気な笑顔で見つめるのは止めて〜。

 「香里、一緒に働く?」

 「あはは〜、本当にぴったりですね〜」

 今のこの格好を招いた元凶の二人が嬉しそうにあたしを見つめる、もうっ。

 「着たのは香里さんですよ」

 「み、美汐さん、なんで……」

 「声に出ていましたよ、香里さん」

 それが本当らしく、舞さんはぷくーって頬を膨らませ、佐祐理さんは困った様な笑顔を浮かべている。

 「ご、ごめんなさい、二人とも」

 「明日までその格好なら許す」

 「そうですね〜、佐祐理もそれでOKです〜」

 これってもしかして自爆って奴かしら?

 ここまで言えば解ると思うけど、今あたしは舞さんと佐祐理さんと同じ服装……看護婦の格好よ。

 そんなあたしの横ではこの格好に祐一はひたすらサムズアップ(親指立てる)でご機嫌だし。

 あ〜ん、もうっ!

 しかし騒ぎはこれだけじゃなかった……みんなも着替え始めちゃったからもう大変。

 名雪はいつも百花屋でしているウェイトレス、あゆちゃんは高校の時の制服、真琴ちゃんは巫女さん、

 妹の栞は夏らしく浴衣、、そして秋子さんは――何故か体操服?

 あたしも前にその姿をした事もあるけど、その時のゆうい……ってそれは関係ないわ!

 「どうかしましたか、香里さん?」

 「あ、いえ、その良く似合っているんじゃないかなって……」

 「ちょっと恥ずかしいですけど、祐一さんはどう思いますか?」

 「ばっちりです! 秋子さんが一番素敵です!」

 「なんだとう!?」

 「あ、ごめん香里、つい本音が……って、あっ」

 その言葉に思わず隣にいた祐一の襟元を掴んで締め上げて、キスまで後ちょっとの距離で睨み付けた。

 「もう一度、聞かしてくれるかしら?」

 「か、香里が一番です、天使です、女神さまです!」

 「祐一、言いたい事があるなら今の内よ?」

 「まあまあ香里さん、お仕置きは後にしましょう、今は楽しまないと……ね?」

 「……そうですね、この件に関しては後できっちり話を付けましょうね、祐一?」

 「お、お手柔らかに頼むな、香里?」

 「ふん!」








 かおりんの夢は止まらない♪ 第五話






 Presented by じろ〜







 そして始まったコスプレパーティー……確か祐一の退院祝いの集まりじゃなかったかしら?

 「ねえねえ祐一、飲んでる〜」

 言いながら名雪は祐一に抱きつこうとしたが、あたしは襟首を引っ張って引き離した。

 「う〜、何するの香里〜?」

 「あたしの祐一に抱きつくのはダメ!」

 「う〜、意地悪だよ〜、横暴だよ〜」

 「どこが意地悪なのよ、それに言いながら祐一の膝の上で寝ないでよ」

 「名雪、おまえなんでそんなに酔っぱらっているんだ?」

 「うにゅ〜、あそこにあったいちご、美味しくって一杯食べたんだお〜」

 「名雪、だお〜ってなによ?」

 「だお〜はだお〜だよ、知らないの〜香里?」

 「知らないわよ」

 「あっそ〜、じゃあお休みなさいだお〜」

 「おい、名雪、寝るんじゃない」

 「こらっ、名雪、何やってるのよ!?」

 「うにゅ〜」

 ごろごろ咽鳴らして……いつも家で寝ているたちの悪いドラ猫に変わっちゃっているわ。

 「うぐぅ、名雪さんずるいよ〜」

 「あうーっ、名雪がまた猫になってるよー!」

 珍しく叫んだだけじゃなくて祐一の側に来ると、二人で名雪の足を掴んでリビングの窓際に

 引きずって、そのまま転がして置いた。

 「うにゅ〜、祐一〜?」

 更にあゆちゃんがソファーからたい焼きクッションを、真琴ちゃんも肉まんクッションを持ってきて

 ふらふら手を動かしている名雪に抱かせた。

 「はい、祐一くんだよ」

 「祐一だから離しちゃダメよ」

 「ありがと〜、あゆちゃん、真琴〜」

 そして名雪はそのまま嬉しそうに二つのクッションを抱きしめてぐ〜ぐ〜寝てしまった。

 「なあ香里、あのたい焼きと肉まんクッションの名前、祐一って言うのか?」

 「二人のお気に入りだからね、そうなんじゃない」

 「う〜む、なんか複雑だなぁ……」

 「嬉しいの? それとも焼きもち?」

 「そうだな、間を取って両方って所かな?」

 「堂々と言ったわね、まあ言うだけなら見逃すけど、手を出したら許さないわよ」

 「何言ってんだよ、俺は香里一筋だぜ、今も昔も……」

 「ばか……でも、ありがとう」

 「香里」

 「祐一」

 いい雰囲気に誘われてあたしは祐一の手に引き寄せられ、目を閉じてキスをした。

 「「ママ、またちゅーしてる〜」」

 「「!?」」

 はっとして目を開いて声のした方を向くと、笑っている娘たちの後ろで秋子さん以外の強烈な嫉妬の

 視線に自分の迂闊さに頭が痛くなった。

 どうも祐一は、昔あたしが言った『ムードを大切にして』発言を実行しているのか、最近祐一と話をしている

 最中に雰囲気に呑まれてキスする回数が増えている気がする。

 あたしってやっぱり流されやすいのかしら?

 「香里さん」

 「あ、はい、秋子さん?」

 「祐一さんが好きなのは解りますが、それは後にした方が良いと思いますよ」

 「は、はい」

 「「「「「「「一人だけずるいっ」」」」」」」

 何がずるいのよ? あたしは祐一の奥さんなんだから問題ないでしょ。

 それになんで寝たはずの名雪まで起きてるのよ?

 「パパー、祐理にもちゅーしてー」

 「パパ〜、祐香にもちゅ〜して〜」

 「よし、祐理、祐香、こっちに来い」

 「「うん!」」

 秋子さんに甘えていた二人が祐一の側に来ると、その可愛いほっぺたに軽くキスをしてあげる。

 「「えへへっ」」

 大好きな祐一にキスされてご機嫌な娘たちは、はにかんだ笑顔を見せてくれた。

 う〜ん、やっぱり娘はたちは最高に可愛いわ♪

 「「「「「「「じーっ……」」」」」」」

 「あのな、そう見つめられてもキスはしないぞ」

 珍しくきっぱり祐一にみんなは驚いた顔をしたが、それでも諦めずにキスして欲しい視線を祐一に浴びせ続けた。

 「だ、だからダメなものはダメだって」

 「「「「「「「じーっ……」」」」」」」

 「はぁ……」

 「みんなダメですよ、祐一さんは結婚しているから出来るわけないんですよ?」

 さすが秋子さん、やんわりと説得する言葉にみんなも少し勢いがなくなった。

 「だから、みんなから祐一さんにキスしてあげれば良いんですよ♪」

 「「「「「「「はい!」」」」」」」

 「へっ?」

 「良いじゃないですか、キスぐらいさせてあげても……減るものじゃないし♪」

 「へ、減ります!」

 「お、落ち着けみんな、それはそれで男として如何ともしがたく断りにくいと言うか……」

 「祐一、はっきりしなさい!」

 「「「「「「「「祐一(さん)!」」」」」

 そしてあたしを押しのけて、祐一は困りながらも顔中をキス責めに有っていた。

 「楽しそうですねー、私もしちゃおうかしら?」

 「秋子さん!!」

 「冗談ですよ、香里さん」

 どこまで冗談でどこから本気なのか、秋子さんはやはり侮れない。






 その後、一度外れた理性は戻らないと、みんなの願望を強烈に見せつけられたわ。

 「うふふっ祐一さん、手を出してください」

 「美汐?」

 がちゃ。

 「おい美汐っ、なんで手錠をはめるんだ」

 「それは祐一さんが悪い人だからです」

 「俺のどこが悪いんだ!」

 「うふふ、それは」

 「それは?」

 「わたしの心を奪った罪な人……恋泥棒です♪」

 「ちょっと待て、決めつけるんじゃないっ」

 「この手錠はわたしと祐一さんの切っても切れないきず……」

 しゃきん!

 「何をするんですか、川澄さん?」

 セリフの途中でいともあっさり舞さんの剣に手錠の鎖を一刀両断されて、座った目で舞さんを睨んでるわ。

 しかし美汐さん、あなた豹変しすぎよ?

 まるっきり別人じゃない、地味なあなたはどこに行ったのかしら?

 「絆とは違う、それは縛り付ける鎖」

 「あはは〜、祐一さんはペットじゃないんですよ〜」

 息のあった二人が、美汐さんの言葉を鎖と同じようにばっさりと切る。

 「くっ、言ってくれますね……」

 「お二人の言うとおりです、絆というのはわたしと祐一お兄ちゃんのように……」

 「子供は寝る時間」

 「そ、そんなこという人きらいですー」

 「あはは〜、事実を言っただけですよ〜」

 「え、えう〜」

 この二人、酔っぱらうと遠慮が全くなくなるわ……危ないわね。

 「甘いわねしおしお、祐一は真琴が頂くんだからーっ!」

 ちゃきっ。

 「良く聞こえなかった、もう一度言って」

 「あはは〜、おでん種になってみますか〜」

 「あ、あう〜っ」

 真琴ちゃん、あなたも迂闊ね……肉まんと漫画で野生の感も鈍ってしまったのね。

 「もうみんな、子供みたいな事言ったらだめだよ。祐一くんはボクに任せて……」

 「食い逃げはだめ」

 「あはは〜、美汐さんに言いつけますよ〜」

 「うぐぅ、食い逃げなんかしてないもん!」

 「「うそ」」

 「うぐぅ」

 あ〜あ、あゆちゃん泣いちゃったわよ……ってあの娘、あたしと同じ年よね?

 そろそろ大人になってちゃんと自分でお金払わないとだめよ。

 「うぐぅ、香里さんまで酷いよう!」

 「あ、ごめんなさいあゆちゃん、つい本音が出ちゃったわ、てへ♪」

 「うぐぅ、香里さんが壊れたー!?」

 「なんですってあゆちゃん?」

 「あ、え、い、な、何でもないです」

 逃げようとしたあゆちゃんを捕まえて、ニコニコしながら頭を撫でて上げる。

 コキコキ。

 「い、いたっ、痛いよ、香里さん!」

 コキコキ。

 「あらっ、ただ撫でているだけなのにそんな事言うなんて……あたし悲しい」

 「う、うぐぅ〜」

 そしてあゆちゃんの頭をしっかりと掴んだまま、空いている手でいつの間にか祐一の膝枕で寝ている

 名雪の頭を掴んで引き起こした。

 「おはよう名雪、何をしているのかしら?」

 「い、痛いよ〜、香里離して〜」

 「何をしているのか聞いているんだけど、名雪?」

 「う〜、ただ寝てただけなのに……酷いよ、香里〜」

 「どこで寝てたの?」

 あゆちゃんと同じようにニコニコして手に力を入れて撫でて上げる。

 コキコキ。

 「いたっ、痛いよ、香里〜」

 「い、痛いよ〜、香里さん」

 「香里が一番怖い」

 「あはは〜、香里さん怖いです〜」

 「俺もちょっと怖いかな、あははは……はぁ」

 「なんか言った、そこ?」

 「「「ううん」」」

 その横で舞さんと佐祐理さんが怖がりながら祐一に抱きついていた。

 でもこの時、すでにあたしは自分でも酔っていた事に気づいていなかった。

 だから、怪しげに窓の外でうごめく影に気がつかなかったわ。






 つづく。




 こんちゃーす、じろ〜です。

 前半部分になりましたが、例の二人組は後編で大活躍(?)だったりして(笑)

 しかし、美汐は壊れちゃってるなぁ……しかもいい具合に♪

 地味な美汐目立っている分、栞や真琴が日陰になっています。

 さて、次は香里が乱れます、それはもう可愛いぐらいに(笑)

 ホント、映像化したいぐらいに……誰かCG描いてー(希望)

 八つ当たりと嫉妬に心を支配された二人組が、一人しらふの祐一に迫る。

 そしてそこに現れた香里の様子がおかしい?

 どたばたホームコメディ、かおりんの夢は止まらない♪第六話「ママってかわいーの!(by祐香&祐理)」

 次回もかおりんがサービス、サービスぅ♪

 

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