Kanon Short Story
かおりんの恋は止まらない♪ 6
こんな言葉が在ったわね・・・「負けらんないのよっ、あたしは!」
「っ・・・」
「・・・」
「くっ」
「・・・」
「ぷっ」
私は視線が気になって髪の毛を乾かすのを止めて、こっちを見ている祐一を睨む。
「我慢すると体に悪いわよ」
「で、でもっ・・・」
口では否定してもその顔は早く何とかしてって訴えているわよ。
「いいから」
「し、しかし・・・」
その可笑しいのか苦しいのか分かんない顔よりいいわよ。
「別に怒ったりしないわ、ちょっと恥ずかしいだけよ」
「そっか・・・じゃあ、はっはっはっはっはっ〜」
塞き止めていた笑いを思いっきりし始めて目尻に涙が浮かんでいる・・・。
「くっくっくっくっくっ」
でもね、祐一・・・。
「ひっひっひっひっひっ」
いくら許可したからってそれは笑い過ぎよ。
「祐一」
「くくっ、な、何だ香里?」
祐一は笑いを堪えながら私の言葉に耳を傾けた。
「私帰るわ、お大事に」
「うぐっ、す、すまん香里」
「さようなら」
私が立ち上がると、突然胸に手を当てて祐一は臭い芝居らしきモノを始めた。
「あう〜胸が苦しいぃ〜腹が痛いぃ〜香里の分の春巻きが効いたかなぁ・・・うぐぅ」
うっ、そんな事言うなんて狡いわよ。
「うぐぅ・・・もう笑わないから許してくれ、香里ぃ〜」
ああんもう! その潤んだ瞳と縋る様に私の手を掴まないでよ。
「香里ぃ〜」
「はいはい、分かったわよ、その代わり・・・」
「はい、もう二度々笑いません、誓います」
「はぁ・・・」
あ〜あ、惚れた弱みって言うのよね、これ?
私は髪の毛を乾かす事を再会すると、その仕草を祐一がじっと見つめていた。
「香里」
「何、祐一?」
「そのパジャマ、似合っているよ」
「これしかなかったのよ、名雪のは」
シャワーを浴びて用意された着替えを見た時の気持ちは祐一には分かんないでしょうね。
上下イチゴの柄でおまけにバスタオルもイチゴ、おまけにその・・・下着も・・・。
「カエルじゃなくて良かったな」
「何の慰めにもなってないわよ、それ」
「ごめん」
「もういいわ、それに今夜だけだから」
「香里」
「何?」
「下着も同じ柄?」
「ばかっ」
私は手に持っていたバスタオルで祐一の顔をはたいた。
風邪を引かない様にと秋子さんが貸してくれた半天も、やっぱりイチゴの柄だった。
祐一はあれから一言も口をきかずにちょっと苦しそうな顔で、ベッドで静かに寝ている。
本当に大丈夫かしら?
たまに祐一の様子を見ながら部屋の本棚の中から文庫本を取り出すと、ベッドの横に座りページを捲る。
ちなみに本のタイトルは「CFガール」だった。
これは結構面白いわ、祐一ってこんな本読んでいるのね。
暫く読むのに集中した。
こんこん。
ノックする音に本を閉じて立ち上がりドアを開けると、そこには頭に猫を載せた女の子が立っていた。
確か真琴って子だったわね。
「どうしたの? こんなに夜遅くに・・・」
「あう〜」
「別に怒っていないから言ってみてくれる」
「あ、あのね、ぴろが祐一とまた寝たいって言うからその・・・」
「ぴろって?」
「あう〜この子」
そう言って自分の頭の上にいるネコを指さす。
「にゃ〜」
ま、ネコぐらいならいいわよね。
「うん、いいわよ」
「わ〜いありがとう〜♪」
すると部屋の中に入ってきた彼女はベッドに近寄って掛け布団を持ち上げると、
ネコと一緒に自分も布団の中に潜り込もうとした。
「ちょっと待ちなさい」
「あう〜?」
「一緒に寝るのはぴろじゃなかったの?」
「あう〜いつも真琴も一緒」
な、なんですって!?
「祐一」
「ぐぅ〜ぐぅ〜」
あのね。
「狸寝入りを止めないと帰るわよ」
「何だ香里、どうした?」
まったく現金な奴なんだから・・・。
「この真琴って子といつも寝ているの?」
「うっ、その・・・まあ、たまに一緒に寝ている事はあったけど・・・」
「あう〜」
「な、なによそれ!?」
くっ・・・この子、私でさえキスまでしかしていないのに添い寝なんて・・・・はっ?
べ、別に今すぐそうしたいとか羨ましいとかそう言うんじゃなくて・・・その・・・あの・・・。
と、とにかく! なんかムカムカしてきたわ。
「か、香里?」
「何よ」
「怒ってる?」
「そうね」
口調が冷たくなるのが自分でも分かる、でも抑えが効かない・・・。
「真琴」
「あう〜何祐一?」
「今日は自分の部屋に戻れ」
「あう〜真琴も今そう思ったからお休み〜」
まるで動物の様に素早い動きでネコを頭に載せたまま部屋から出ていった。
さてと。
「祐一に聴きたい事が有るんだけど良いかしら?」
「お、おう」
私は微笑むと祐一に顔を近づけて出来るだけ優しく言った。
「まさか名雪と一緒に寝た、なんて事は無いわよね?」
「は、はいっ、決してその様な事は御座いません」
「それじゃあのあゆって子ももちろん・・・」
「香里様に誓って有りません!」
祐一ったら体の調子が悪くなったのか汗をかいて青くなってきちゃったわ。
ま、この辺で許してあげましょう。
「ふぅ・・・いい、今日からは他の女の子と一緒に寝ちゃ駄目よ、絶対に!」
「はいっ!」
う〜ん・・・でも祐一って隣に女の子寝ていてもその気にならないのかしら・・・。
「ねえ祐一」
「何?」
「隣にあの子が寝ていてもその・・・へ、変な気起こさないの?」
「ああ、あいつって女の子と言うよりイヌとかネコみたいだから・・・」
「そうなの・・・」
つまりあの真琴って子は恋愛の対象じゃないのね、ちょっと安心したわ。
「それに香里は大事な事を忘れている」
「なによ?」
「俺がその気になるのは香里だけって事」
「なっ、何言ってんのよ!?」
「あ〜あ、残念だよなぁ・・・せっかく香里が俺の部屋に泊まってるのに・・・」
もうバカなんだから・・・でも、なんか嬉しく思っちゃうのも仕方ないのよね。
「とにかくもう寝た方が良いわよ、明日もこれじゃ学校に行けなくなるわ」
「まあそうだな、それじゃ目覚ましをセットして寝るか」
「あっ、ちょっと貸して少し早く起きるから・・・」
「お、おいちょっと・・・」
祐一の手から時計を取り上げると、早めの時間に合わせようと針を動かしたら妙な音が時計から
聞こえだしたので、私は耳を傾けた。
「朝〜朝だよ〜朝御飯を食べて学校に行くよ〜・・・(以下エンドレス)」
そう・・・そうなの、確かに名雪は今ここには来ないかもしれないわ、でもね・・・。
「祐一」
「は、はい」
怒りに震える手で、しっかりと握りしめた名雪の声入り目覚まし時計を祐一の目の前に突きつけた。
「何なのよこれは?」
「目覚まし時計です」
「そんな当たり前の事聴いてないわよ」
「それは、その・・・名雪に借りたらその声が録音されていたんだ」
「ふ〜ん・・・そう」
名雪ったらやるわね・・・案外策士なのかもしれないわ、油断大敵ね。
もしかしたらうぐうぐ言ってたあゆって子も何かするかもしれない、いやすでにもうしているのかしら?
私は確認するため祐一に冷ややかな視線を送る。
「祐一、他には無いんでしょうね?」
「ほ、他にって・・・」
「言うのなら、今の内よ」
「うっ・・・じ、実はその・・・」
や、やっぱり何か在ったのね!?
「なによ、はっきり言いなさいよ!!」
「こ、この間風呂に入ろうとしたら先にあゆがいて・・・いや、これは事故なんだ!」
な、なんですって!? 添い寝だけじゃ飽きたらず混浴なんて!
い、いくら祐一が私の事好きだって言ってもこれじゃいつか魔が差すかもしれないわ。
まっ、まさかまさかっ!?
私はたった今頭の中に浮かんだ疑問を怯えてこちらを見ている祐一に聞いてみた。
出来るだけ優しく微笑みながら・・・。
「祐一、まさか秋子さんとは何にも無かったでしょうね?」
「そっ、それはまだ在りませんっ」
「まだって何よ!?」
「ご、ごめんなさい〜っ」
駄目よ、このままじゃ私ここの住人に負けっ放しだわ! 恋人の面子丸つぶれよ!!
決めた。
「祐一」
「な、何でしょうか?」
「もう少し端に寄りなさい」
「はっ?」
「いいから寄りなさいよ! 私が寝られないでしょう?」
「か、香里、今なんて言った?」
「だ・か・ら! 私も一緒に寝るって言ってるのよ」
ちょっと? そんなにまじまじと見つめないでよ、これでも言うのに結構勇気が必要だったんだから。
「香里、顔真っ赤だぞ」
「い、嫌ならいいわよ別に・・・」
「な、何をおっしゃる香里さん! ささっ、早く寝ようぜ♪」
なんか急に元気になってない祐一?
「どうした香里、寝ないのか?」
「寝ないなんて言ってないわよ、そ、それじゃ・・・お邪魔します」
「おう、どんと来い!」
「言っとくけど添い寝だけよ、Hな事したら許さないからっ」
「合点承知♪」
「ばかっ」
そして、今夜は成り行きとはいえ初めて男の人と一つの布団で寝ることになってしまった。
でもちょっぴりな不安と妙な感じに胸がどきどきして眠れそうに無かった。
「お休み香里」
ちゅっ。
「う、うん、お休み祐一」
お休みのキスの所為で私の心臓は更に胸の動機が激しくなってしまった。
これじゃ今日はもう眠れないわ・・・はぁ〜。
おわり
どうも、じろ〜です。
遅くなりましたが第六弾です。
水瀬家における祐一の私生活を垣間見たかおりんこと香里は、
等々大胆な行動に走ってしまいました。
果たして添い寝だけで済むのか? それとも祐一は『おとこ』になるのか?
香里は不安と期待(?)に心臓が今にも破裂しそうだった。
さあ祐一! 逃げちゃだめだ!
じろ〜さん、SS投稿ありがとうございます!
香里、逃げなきゃだめだ!(爆)
坂道を転がり落ちるようにハマっていくかおりんの行く末が大いに気になりますね〜♪
じろ〜さんはNorth
Book CityのHP主催者で、Kanonの他、Piaキャロ2、エヴァ、センチ、こみパ、ToHeart、エースコンバット3等、幅広いジャンルの素晴らしいSSを沢山書いておられます。
まだこのHPを知らない方は是非、上記のリンクより御覧になってください!
また、このSSの感想をじろ〜さんに伝えましょう!
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