Kanon Short Story






 かおりんの恋は止まらない♪ 






 私は祐一を今日ほど尊敬したことは無かった・・・。






 「祐一も香里もひどいよ〜」

 「黙って帰ってしまう姉さんなんて嫌いです」

 部屋で話をしていたら、学校から帰ってきた名雪と栞に私達は膨れた顔で攻められた。

 「すまん名雪」

 「・・・イチゴサンデー」

 「解った、今度奢ってやるから」

 「約束だよ」

 にこにこしてすっかり機嫌が良くなる名雪・・・ほんと子供ね、くすっ。

 「姉さん、学校を抜け出して祐一さんと何をしてたんですか?」

 こっちはなんかさっきより目つきが怖いわね・・・これはマジに怒っているわ。

 「何って・・・その、祐一に強引に連れ回されたのよ、文句なら祐一に言ってね」

 「お、おい香里、それはないだろう〜」

 でも、半分は本当の事だから・・・ごめんね祐一。

 「本当なんですか、祐一さん?」

 「う、うん、まあそう言う事になるかな・・・」

 「そ」

 「そ?」

 「そんなことする祐一さんなんて嫌いですぅ〜!」

 タッタッタッ。

 瞳を潤ませて祐一の部屋から出ていってそのまま家に向かって帰ってしまった。

 ごめんね栞・・・恨むんなら祐一にしてね、みんなこいつが悪いのよ。

 あれ? でも栞ってあんなに走れたかしら? まあいいわ、それよりも。

 「ちょっと祐一、誰が栞を泣かせろって言ったかしら?」

 「か、香里? おまえなぁ〜」

 「なによ、違うとでも言うの?」

 「ぐっ・・・確かに違うとは言わんが」

 ふふん、何か秋子さんと企んでいるみたいだからちょっとは困ってくれないとね。

 「ねえ、祐一」

 「ん、何だ名雪?」

 名雪も真剣な表情になって私と祐一を交互に睨む。

 「いつから香里は祐一の事呼び捨てにしてるの?」

 「ええっ、あ、う〜ん・・・きょ、今日からかな」

 「どうして?」

 「その・・香里と恋人同士になったから・・・」

 ありがとう祐一、ちゃんと言ってくれて・・・凄く嬉しいわ。

 「そうなんだ、知らなかったよ」

 名雪が泣きそうな顔になって唇を噛みしめている・・・ごめんね名雪。

 ごめんね名雪、私は祐一が好き・・・もうどうしようもないぐらいに好きなの、だから

 名雪を傷つけても祐一と一緒にいたいの。

 「祐一・・・」

 「ん?」

 「私まだまだ諦めないから!」

 「へっ?」

 「必ず香里から祐一を奪ってみせるから・・・応援してね、祐一♪」

 「あ、あの名雪?」

 ど、どうしちゃったのよ名雪? それじゃキャラクターが違うわよ。

 「そうと決まれば、ごはんっごはんっ♪」

 名雪は足取りも軽く、妙な歌を歌いながら自分の部屋に戻って行った。

 「ど、どうするのよ祐一!?」

 「どうするもこうするも・・・どうしよう?」

 あ〜あ、なんかすんなりいきそうじゃないわねこの恋・・・でも誰にも渡すもんですか!

 祐一は・・・その、わ、私の物なんだからね。






 「はぐぅはぐぅ・・・うぐぅ〜み、水ぅ〜」

 「あゆあゆは落ち着いて食べろって」

 「うぐぅ、ボクあゆあゆじゃないもん!」

 「じゃ食い逃げ」

 「うぐぅ、祐一君のいじわるぅ〜!」

 子供がいるわ。

 「もぐもぐ・・・あう〜み、水ぅ〜」

 「真琴、おまえなぁ・・・誰も御飯を取らないからゆっくり食えよ」

 「あう〜だって祐一すぐ真琴の肉まん食べるから」

 「どこに肉まんが有るんだ?」

 「あう〜」

 「はい真琴、肉まんよ」

 「わぁ〜い、ありがと〜秋子さん」

 「あ、秋子さぁん・・・」

 こっちはペットかしら?

 「ぱくぱく・・・美味しいよぉ〜」

 「なあ名雪」

 「何? 祐一」

 「お前今すっごく幸せだろ?」

 「ううん、ちっともだよぉ〜、悲しいはずなのに・・・でもお母さんのご飯が美味しいから〜」

 「うっ、そ、そうか」

 ここにも子供がいるわ。

 でもここはどこ? 私は誰? 少なくても保母さんじゃないわね。

 しかし、目の前の光景はどう見ても保育園のお昼の時間と何にも変わらない様な感じだわ。

 「どうした香里、食欲無いのか?」

 「・・・別に、ちょっと驚いていただけよ」

 「遠慮しないで沢山食べて頂戴ね」

 「は、はい」

 そうね、せっかくの秋子さんの料理だから食べないと悪いし、なにより美味しいからね。

 う〜んと、どれにしようかな〜。

 私はシュウマイを一つ摘んで口の中に入れる。

 ぱく。

 あ〜んやっぱり秋子さんって料理上手なのよねぇ。

 「どうかしら香里さん、お口に合うかしら?」

 「はい、美味しいです秋子さん」

 「良かったわ、ふふっ」

 しかし祐一はいつもこんなに美味しい食事を毎日食べているのね・・・ちょっと羨ましいわ。

 「そうそう香里さん、ここに取って置きが有るんだけど食べてみてくれないかしら?」

 「ええ、もちろんいいですよ」

 しかしこの返事はしてはいけなかった・・・私ってどうして自分の首を絞めることしちゃうのかなぁ。

 「さあどうぞ召し上がって♪」

 どんなのかしら・・・こ、これは! 見た目は春巻きだけど、中身は間違いなくあれの感じがするわ。

 がたん。

 「ごちそうさま、ボクもうお腹一杯です」

 がたん。

 「ごちそうさま、真琴部屋に帰って漫画読まないっと」

 がたん。

 「お母さん、ごちそうさま、美味しかったよぉ〜」

 がたん。

 「ごちそうさま秋子さん、今日も美味しくて満足です」

 がしっ。

 「どうした香里、遠慮せずに心ゆくまで食べてくれ」

 私は目を潤ませて『お願い、私を一人にしないで!』と無言で祐一の顔を見つめ続けた。

 祐一は軽くため息をついてから私の頭をポンと叩くと、座り直してから耳元で囁いた。

 「キス、よろしくな」

 「ば、ばか」

 もうっ・・・でもありがとう祐一、ちゃんと後でキスしてあげるわ。

 「秋子さん、やっぱり俺も食べて良いですか?」

 「ええどうぞ、沢山食べて下さい」

 祐一は箸を掴むと・・・なんか箸が小刻みに揺れているわ、がんばってあなただけが頼りなのよ。

 「あの秋子さん、これの中身はなんですか?」

 「もちろん私の自信作です♪」

 ごく。

 あ、祐一の喉がなった・・・とうとう食べるのね、なんかどきどきするわ。

 「い、いただきます」

 「どうぞ」

 ぱく。






 「人は何でも頑張れば食べられるのねぇ・・・」

 「か、香里・・・何感傷に浸っているんだよ、うぐぅ〜」

 夕食に関しては多くを語りたくはないわ、でもしいてあげるなら祐一の私への愛が強いと言う事が確認

 出来たことが唯一の慰めかしら。

 「一人で何まとめてるんだ・・・うっぷ」

 「ごめんなさい、大丈夫祐一?」

 「とりあえず生きてる・・・うぐぅ」

 あれから気絶した祐一を秋子さんと二人で二階まで運んでから、ベッドに寝かせたけど意識だけは戻った。

 「ふぁいとだね、祐一」

 「名雪、それは嫌みか?」

 「ううん、そんなこと無いよ全然」

 「うぐぅ」

 「ごめんなあゆ、おまえの『うぐぅ』を使ってしまって」

 「うん、祐一君が生きているだけで嬉しいから・・・」

 「や〜いや〜い祐一のおばかぁ〜」

 「直ったら覚えてろよ、真琴・・・」

 なんだかんだ言っても祐一は女の子に人気があるのね、ちょっとだけ焼けちゃうわ・・・ちょっとだけよ。

 「そろそろ帰った方がいいんじゃない、香里?」

 「送れなくてすまんな香里、うっぷ」

 祐一は弱々しく片手を挙げて私に挨拶をする、ごめんね私の身代わりになってくれて。

 「ほら、祐一も言ってる事だし早く帰った方がいいよ、明日も学校だし・・・」

 「で、でもこんな状態の祐一をほうっては帰れないわ」

 「香里大丈夫だよ、後は私に任せて・・・すべてね」

 ん? 名雪、何なのよその嬉しそうな笑顔一杯の顔は!?

 「ちょっと名雪、あなた何でそんなに私を追いだそうとするの?」

 「ひどいよ〜香里、私は香里のためを思って言ってるのに」

 「違うわね、名雪にとってはこれがチャンスなのよね?」

 「ち、ちがうよ〜」

 あからさまに目を逸らしたわね・・・そう、身動きが出来ない祐一に何かするつもりなのね。

 私の目が黒いうちは、絶対にそんなことさせるもんですか!

 名雪と睨み合っていると秋子さんがやって来た。

 「あらあら、どうしたの香里さん?」

 「秋子さん、今夜はずっと祐一の看病します」

 「了承」

 相変わらずの即答に私はニヤリとして名雪を横目で見る、ふふっ悔しそうにほっぺた膨らませているわ。

 「大丈夫ですか、祐一さん?」

 えっ? 秋子さんそのピースサインはなんですか?

 「も、もちろんです・・・うぐぅ」

 祐一も震える手でぐっと拳を握って親指を立てる・・・ま、まさか!?

 「それじゃ香里さん、祐一さんの事よろしくお願いしますね♪」






 ま、またはめられたぁ〜!!






 「よろしく香里♪」






 終わり




 どうも、じろ〜です。

 かおりんSS第五弾です♪

 ついに祐一と秋子さんの策略にはまってしまった香里です。

 香里は初めての彼の部屋にお泊まりに自分から望んでしまった。

 ドキドキする胸は今にもはち切れそうな勢い。

 果たして二人は一戦交えるのか?(笑)

 それとも名雪、あゆ、真琴の三人は香里に何をするのか?

 がんばれ祐一、後はお前次第だ。

 グッドラック!

 ではでは。


 じろ〜さん、SS投稿ありがとうございます!

 二人の世界から一気に混戦模様になってきましたねー。

  またもハメラれた香里ですが、名雪たちの参戦を祐一はちゃんと計算してるのでしょうか?

 それとも計算外の展開になってしまうのか……祐一くんがどうづるのか見物ですね。

 じろ〜さんはNorth Book CityのHP主催者で、Kanonの他、Piaキャロ2、エヴァ、センチ、こみパ、ToHeart、エースコンバット3等、幅広いジャンルの素晴らしいSSを沢山書いておられます。

 まだこのHPを知らない方は是非、上記のリンクより御覧になってください!

 また、このSSの感想をじろ〜さんに伝えましょう!

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