Kanon Short Story





 かおりんの恋は止まらない♪ 7






 今夜の私は大胆だった、そして隣で寝ている祐一の顔を見た瞬間・・・むかついた。






 「祐一・・・」

 「ZZZZZZ」

 「ちょっと祐一?」

 「ぐぅ〜ぐぅ〜」

 私の呼び掛けに答えない理由は理解が出来たが・・・でも、納得できない!

 「何が『その気になるのは香里だけ』よ? 調子の良いこと言って・・・・」

 私が勇気を出して布団に入ってからどのくらい時間が経ったと思っているのよ?

 「むにゃむにゃ・・・」

 10分も経たずにぐ〜すか気持ちよさそうに寝てしまったのは誰よ? 全く!

 それってあんまりにも失礼じゃない? 隣にはこんなに綺麗で可愛い女の子が寝ているのに・・・。

 私は胸の動悸が激しくて恥ずかしくて緊張して眠れないのに・・・祐一、あなたって酷いわ。

 「何よ・・・一人でどきどきしているなんてバカみたいだわ、ちょっとは・・・はっ!?」

 な、何考えているのよ私ったら・・・ち、違うのよ、別にあんな事とかそんな事・・・。

 ぼっ!

 どきどきどきどきどきどき。

 いやっ、考え出したら止んなくなっちゃった・・・ど、どうしよう〜。

 そうよ! 落ち着くのよ私! まずは目を閉じてそれから深呼吸をしましょう。

 す〜は〜す〜は〜。

 ふぅ・・・ちょっとは落ち着いてきたわ、一人で起きているから変な事考えちゃうのよ。

 もういいわ、気持ちよさそうに寝ている祐一を起こしてまで文句言ってもしょうがないしね。

 「お休み祐一♪」

 そう言ってから寝ようとした私の体を祐一が引き寄せて抱きしめた。

 「ちょ、ちょっと祐一!? そんな事しないって・・・」

 「・・・香里〜、好きだ・・・ぐぅ・・・」

 胸に抱きしめられたまま、あたしは顔を上げて祐一を見るとやっぱり寝ぼけていただけの様だった。

 「もう、ビックリさせないでよ・・・てっきりそうなるのかと思っ・・・はっ?」

 わ、私なんで期待しちゃっているの? 違うぅ、そうじゃないのよ〜。

 頭の中では否定しても私は祐一の顔から目が離せなかった・・・。

 起きている時はちょっと目つきが悪く見えるけど、寝ている時はなんか可愛いわ・・・ふふっ。

 その可愛い寝顔を見つめたまま私は顔を近づけていく、自分でも気が付かないうちに・・・。

 そして私の唇が祐一の唇に触れようとした瞬間・・・。

 がん。

 「うぐぅ、痛いよ〜」

 妙な音と悲鳴があたしを正気に戻した・・・わ、私っ、私ったら今何をっ!






 ドアを開けると部屋の外にいたのは鼻を押さえて蹲ってうぐうぐ言っているあゆって子供だった。

 「うぐぅ、ボク子供じゃないもん」

 「・・・・・・」

 私は冷たい目線で目の前に座っているたい焼き娘を見下ろした。

 せっかくあと少しだったのに・・・そ、そうじゃないっ。

 とにかく、今はこのうぐぅ娘をどうして挙げようかしら、ふふふ・・・。

 いい、今夜の私に怖い物は無いのよ! 秋子さんのジャム以外はね。

 「いたいよ〜」

 「自業自得よ、ところで何をしていたのかしら? こんな夜遅くに・・・」

 「なにって・・・」

 「しかも祐一の部屋の前で・・・」

 「うぐぅ、ただ祐一君とたい焼きを食べようと思って」

 そう言って私の目の前にたい焼きが沢山入った紙袋を掲げたので、中を覗いてみると

 ほかほかと湯気が立っていた。

 どうしてこんな夜中に出来立てのたい焼きが有るのかは\(^_\)それは(/_^)/こっちにおいといて、

 私はその袋を取り上げると部屋の中に入ってドアを閉めた。

 「うぐぅ、ボクのたい焼き〜!」

 「ちゃんと食べて挙げるわ、祐一と一緒にね」

 「うぐぅ、ひどいよ〜香里さん!!」

 ドアを叩いて騒いでいるけど聞く耳持たない私は、ドアに鍵を掛けて誰も入って来れない様に

 してからベッドに戻った。

 これで誰にも邪魔されないで二人っきりになれたわね・・・あれ、なんか違うのかしら?

 まあ細かい事は気にしないで寝ましょう。

 いつの間にかドアの外も静かになっていた、きっと諦めたのね。

 この私、美坂香里がいる限りこの部屋に特に夜中なんかに女の子なんて絶対入れないから!

 しかし良く寝ているわね、祐一・・・全く、でもこれなら間違いは起きないわよね?

 ちょっと逞しい祐一の腕をしっかりと抱きしめながら私は眠りに就くことにした。

 別に焦ることも無かったのよ、だって私達はこれからだからね、祐一?

 「す〜す〜」

 「ふふっ」

 ちゅっ。

 以外にも柔らかくてすべすべしたほっぺたにキスをして挙げた。

 「んが・・・」

 「お休み祐一♪」

 やっと寝られると思ったのにまたしても新手がやって来た、それも窓を開けて・・・。






 がらがらがら〜。

 「祐一、腹減った」

 「あはは〜こんばんわ祐一さん、舞と遊びに来ちゃいました〜」

 な、な、今度は何なのよ!?

 私が慌ててベッドから降りて部屋の電気をつけると、そこにはまたしても女の子が・・・それも二人も!

 「こんばんは〜」

 「あ、あの・・・」

 ん? この人どこかで見た事が有るような・・・ああっ、前に教室に来て何故か掃除し始めた人だわ。

 「あ、初めまして倉田佐祐理と申します、こちらは親友の川澄舞って言います」

 「ど、どうも、美坂香里です」

 って・・・何夜中に窓から入ってきた人と挨拶してるのよ、私たっら?

 そんな事考えていたら川澄さん・・・だったかしら? 祐一が寝ているベッドに近づくといきなりその頭にチョップした。

 ビシッ。

 「ぐあっ」

 そして頭を押さえながら祐一がベッドの上で跳ね起きた。

 「だ、誰だっ!? 人が気持ちよく寝てるのに起こしたのは・・・って舞?」

 「祐一、腹減った」

 「あ〜すまん、今日はちょっと体調崩して行けなかった」

 「ぽんぽこタヌキさん」

 「う〜んそう言われてもなぁ・・・あれ、佐祐理さんどうしてここに?」

 「こんばんは〜祐一さん、舞がどうしても祐一さんと遊びたいって言う物ですから一緒に来ちゃいました」

 ぽかっ。

 こちらに向いた川澄さんは今度は倉田さんの額にチョップをした。

 「そうか舞、そんなに俺と遊びたかったのか〜」

 ぽかっ。

 また祐一の方を向いて同じく額にチョップした。

 「それはもう、今日だって祐一さんが来ないから会いに行くって舞が言い出したんですよ〜」

 ぽかぽかぽかっ。

 「きゃあきゃあきゃあ♪」

 真っ赤な顔した川澄さんが倉田さんの額に連続チョップしていたが、もうそんな事はどうでも良かった・・・。

 目の前で繰り広げられている和気あいあいとした三人を見ていた私は笑顔を浮かべて、そして自分の拳を握りしめながら

 祐一に詰め寄った。

 「どう言う事か説明して貰いましょうか、祐一?」

 「か、香里さん、その笑顔ちょっと怖いんですけど・・・」

 「せ・つ・め・い・し・て、祐一」






 「ダンスの練習?」

 「うむ、実はそうなんだ」

 ダンスパーティーが有るのは学校でポスターを見たから知ってはいたけど・・・。

 「それじゃ何で夜中に学校でしているんですか?」

 「舞は恥ずかしがり屋さんですから、人前だと駄目なんですよ〜」

 ぽかっ。

 「ねっ? この通りなんですよ〜」

 あははは〜と笑いながら佐祐理さんはおでこでチョップを平然と受けていた。

 これってボケと突っ込み?

 でも、今はそんな事よりも肝心な事聞かないとね・・・。

 「祐一、どうしてあなたが舞さんのダンスの相手をしている訳?」

 「うむ、実はな・・・舞が俺じゃなきゃいやいやって手を握りしめて放さなかったからなんだ」

 「あははは〜佐祐理もそれ見てました、舞ったら以外に積極的で驚いてしまいました」

 ぽかぽかぽかぽかぽかぽかっ。

 真っ赤になった舞さんは祐一と佐祐理さんを交互に連続でチョップを繰り返していた。

 んん? ちょぉっとまってよ!

 それってつまり舞さんが祐一の事好きって事じゃないの!?

 そしてそれに付き合っている祐一は・・・。

 いわゆる二股?

 そう頭の中にぴったりな言葉が浮かんだ瞬間、私は立ち上がってベッドに行くと横になって布団を被った。

 「香里?」

 何も聞きたくなかった、答えたくもなかった・・・。

 ただ目を閉じて楽しそうな目の前の二人を見ていたくなかった。

 「あの祐一さん、夜も遅いのでそろそろ佐祐理達も帰りますね〜」

 「祐一、腹減った」

 「うん気をつけて佐祐理さん、舞今度奢ってやるから・・・って何覗いているんだ?」

 「たい焼き」

 「何? どれどれ・・・ホントだしかも湯気でてる、どうして?」

 「祐一・・・食べたい」

 「う〜んまあこのまま冷めたら勿体ないしな・・・じゃあ舞、今日はこれで許してくれるか?」

 「はちみつクマさん」

 「よし落とすなよ舞、それじゃ二人とも気をつけて」

 「あははは〜お休みなさい祐一さん」

 「お休み」

 がらがらがら〜ぴしゃ。

 「さて俺も寝るかな・・・」

 そう言いながら祐一が布団の中に入ってきた。

 「もう寝ちゃったか、香里?」

 「・・・・・・」

 今祐一と顔を会わせたくなかった、自分の顔を見られたくなかった・・・。

 「ん、香里どうしたんだ頭から布団を被って・・・」

 そう言って掛け布団を退けようとするが私はぎゅっと握って放さなかった。

 「香里? どうした、何かあったのか?」

 「触らないで」

 私の口からは感情がない冷めた言葉がこぼれた・・・。

 「何怒っているんだ香里?」

 今度はさっきよりも強い力で掛け布団を引っ張られて、私は顔を見られてしまった。






 「香里・・・」






 閉じた瞼から涙が溢れ出て、私は泣いていた・・・。






 おわり



 遅くなりましたが第七弾です。

 祐一の回りに居る女の子達に最初は怒っていたが次第に心の中に

 何故か悲しみが広がっていったかおりん・・・。

 さあここで男の真価が問われるところだ、祐一。

 上手く慰めれば美味しい展開間違いないぞ♪

 最早邪魔する者も居なくなった祐一の部屋でかおりんはどうする?

 次回もサービスサービスぅ〜♪


 じろ〜さん、SS投稿ありがとうございます!

 今回のラストはシリアスでしたね〜。

 振り回されっぱなしのかおりんの逆襲がはじまった・・・のかも?

 じろ〜さんはNorth Book CityのHP主催者で、Kanonの他、Piaキャロ2、エヴァ、センチ、こみパ、ToHeart、エースコンバット3等、幅広いジャンルの素晴らしいSSを沢山書いておられます。

 まだこのHPを知らない方は是非、上記のリンクより御覧になってください!

 また、このSSの感想をじろ〜さんに伝えましょう!

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