Original Works 『Kanon』



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 Kanon Short Story






 う〜ん、今日はたっぷり寝たからすっきりしているわ・・・ごめんね、祐一♪






 「ふあぁ〜・・・あれ、祐一がいないわね・・・」

 いつもなら隣で寝ている祐一の姿が無かった、もちろん部屋にもいなかった。

 がちゃ。

 「おはよう香里、もう起きたのか?」

 「おはよう祐一、朝からどうしたの?」

 あたしがそう言うとさも心外だなと言う顔つきになって肩を落とす。

 「そんな言い方ないだろう、人がせっかく朝食を作ってたのに・・・」

 「・・・今日は雪かしら?」

 「解った、そんなこと言う奴にはやらん」

 踵を返して出ていこうとする祐一にあたしは慌てて声を掛ける。

 「あ、ご、ごめんなさい祐一っ」

 「さてと、朝食食べたらどこかに出かけるかなぁ・・・」

 「あ、あの祐一?」

 「たまには一人で買い物もいいなぁ〜」

 「ゆ、祐一・・・」

 「おおっ、香里は今日は一日中寝ているんだな?」

 あ〜あ、まずいわねこれは・・・どうしよう?

 あたしがおろおろしていると、祐一は突然ニマって笑いあたしに覆いかぶさってきた。

 「狼狽えている香里もなかなか可愛かったぞ〜♪」

 「も、もうっ、祐一っ・・・んんっ!?」

 朝からいきなり濃厚なキスをしてくる祐一にあたしも合わせるように応える。

 ふにふに。

 「・・・んっ? ちょ、ちょっと・・・」

 さわさわっ。

 「な、何してるのよ祐一!?」

 「何ってもう香里さんたらっ・・・いやん♪」

 「いやんじゃ無いでしょうっ・・・あん」

 ぷちぷち。

 ああ、言ってるそばからパジャマのボタンを外すんじゃないわよ。

 「こ、こらっ駄目だってば・・・んくっ」

 祐一のキスがあたしの抵抗する力を奪っていく・・・やぁ、力が抜けちゃう。

 「香里・・・」

 「な、なによ?」

 祐一があたしの顔をじ〜っと見つめる・・・や、やだ、なんか照れちゃうわ。

 「たっぷり可愛がってやるからな♪」

 「だ、だめよ・・・」

 「いただきま〜す♪」

 「ゆ、んぐっ・・・」

 結局、昨夜の事も有ってあたしは朝から祐一に美味しく食べられちゃった・・・はぁ。






 かおりんの愛は止まらない♪ 第六話






 Presented by じろ〜






 「ホントにもうケダモノなんだから・・・」

 「それは違うぞ香里」

 「どこが違うのよ?」

 「香里だけにしかそうならないって所かな?」

 「ば、ばかっ・・・」

 あたしを見てニヤニヤしている祐一から視線を逸らすとマグカップを持ち上げて口に運ぶ。

 「くくっ・・・」

 「な、なによっ」

 「俺の彼女はこんなに可愛いなぁって思っただけだよ」

 「も、もうっ・・・」

 テーブルをはさんで前に座った祐一は頬杖をついてあたしのことを微笑みながら見つめていた。

 でも、とっても嬉しくて暖かい気持ちだったのは悔しいから祐一には内緒よ。

 それから遅めの朝食をゆっくりと取ったあたしたちは、久しぶりに二人で出かけた。

 最近は変態だのストーカーだの食い逃げだのとばたばたしていたからなんだか新鮮だわ、ふふっ。

 ついついあたしらしくもないけど、ハミングなんてしてしまう♪

 「♪〜♪♪〜」

 「お、なんかご機嫌だな香里?」

 「うん、すっごくね♪」

 自分の気持ちを教えるように祐一の腕を両手で抱きしめる。

 「香里、今日は積極的だな?」

 「たまにはね、さあ今日はどこに連れて行ってくれるのかしら?」

 「おう、まかせろ!」

 そしてそんなあたしたち伺っている二人組にこの時は気づかなかった。

 やっぱり浮かれていたせいかしらねぇ・・・。






 「くっ・・・おのれ相沢! 俺の美坂にべたべたしやがって・・・くそっ」

 「解るぞその気持ち、あいつさえいなければ今頃佐祐理さんは私の物だったはず・・・」

 「久瀬!」

 「北川!」

 「「ふっふっふっふっふっふっ・・・」」

 「まずはあのにっくき相沢をなんとかしないとな・・・」

 「北川・・・こしょこしょ」

 「ほほう、なるほど・・・なかなか良い作戦だな」

 「当然だろう、この私にかかればこんな作戦すぐに浮かぶぞ」

 「よし! ではさっそく行動開始だ」

 「ではこれを・・・」

 「どのくらい強いんだ、これ?」

 「まあ死なない程度だ・・・」

 「それなら安心して相沢に飲ませてやれるな」

 「当たり前だ、殺してしまっては元も子も無い・・・それに犯罪者にはなりたくないぞ」

 「同感だな」

 「「ふっふっふっふっふっふっ・・・」」






 いろいろとお店を見て回った後、お気に入りの百花屋でお茶をすることにした。

 「そうだ、ここの試してみたいメニューが有るんだけどいいか?」

 「変な物じゃなければ良いわよ」

 「OK♪」

 注文を取りに来たウェイトレスに祐一が小さな声で話すと、あたしを見てニコリと微笑んでから

 オーダーを伝えにいった。

 「何を頼んだの?」

 「そいつは来てのお楽しみっ♪」

 「まさか辛し入りパフェとかワサビケーキとかじゃないでしょうね?」

 「そんな変な物あるかっ、ごく普通の物だ」

 「ホント?」

 「ああ、但し・・・」

 「何よ?」

 「恋人同士限定だけどな♪」

 にやり。

 祐一の笑った意味が解ったのは、あたしたちのテーブルにそれが運ばれて置かれた時だった。

 「こ、これはっ・・・」

 「ん、どうした香里?」

 た、確かに恋人同士限定だわ・・・一つの大きめのグラスにストローが二本ついているんだから。

 「さすがに一人じゃ注文出来なかったからな・・・これで全メニュー制覇だ」

 満足そうに頷く祐一にあたしは半ば呆れていたけど、心の片隅ではちょっと憧れていたシーンだったので

 満更いやでもなかった。

 ん? あたしだって恋する乙女なんだからそう言う願望ぐらい有るわよ。

 ただ、前の・・・祐一と恋人同士になる前のあたしだったら絶対恥ずかしくていやだったけどね。

 「さあ、香里♪」

 「ホントにもうしょうがないわね・・・」

 なんだかんだ思っても嬉しい心が隠せないので、あたしは顔を赤くしながらもストローに口を付けた。

 ふふっ、それになんと言っても恋人同士のお約束だしね♪

 今日は本当に浮かれちゃっているなぁと思いつつも、祐一の顔を見つめながら穏やかな時間を過ごした。






 すっかり日も傾き、夕焼けに染まる空を見ながらアパートに帰る途中で噴水のある公園に寄り道をする。

 「今日は楽しかったわ、ありがとう祐一」

 「おうっ、俺も楽しかった・・・ありがとう、香里」

 「くすくすっ」

 「ははは〜っ」

 ベンチに寄り添って座るあたしたちはお互いの手をしっかりと握っていた。

 誰もいないオレンジ色になった公園は、あたしたち二人だけの世界だった・・・それはとても幻想的で綺麗だった。

 「ねえ祐一・・・」

 「ん?」

 「もし、この世界に残ったのがあたしたちだけだったらどうする?」

 「ん〜、そうだなぁ・・・」

 少し真面目な顔つきになる祐一だったけど、すぐにニカっと笑いあたしにこう言った。

 「今と同じかな・・・たぶん」

 「どうして?」

 「当たり前だからかな、こうして香里の側にいることがさ・・・」

 「祐一・・・」

 「香里はどうなんだ?」

 「そんなこと聞かなくても解っているでしょ」

 「聞きたいなぁ・・・香里?」

 「もうっ・・・あたしも同じよ、祐一」

 「香里・・・」

 「祐一・・・」

 しばらく見つめ合い微笑んでいたあたしたちは、どちらともなく瞼を閉じて顔を近づけていく。

 そして・・・。

 しかし唇が触れることがなかった・・・あ、あれ?

 「あ、か、体が・・・あれ?」

 「あ、あたしも・・・なんで?」

 あたしも祐一も体がしびれてキス直前の姿勢のまま、動くことが出来なかった。

 な、なんなのよこれ!?

 「「ふははははははは〜っ!!」」

 「だ、だれ?」

 あたしたちの目の前に、妙な笑い声と共にどこからか現れた二人の男が立っていた。

 「お、お前は・・・久瀬?」

 「き、北川君?」

 「その通り、佐祐理さんの真の恋人の久瀬だ!」

 「同じく、相沢の魔の手から美坂を救いに来た北川だ!」

 「北川・・・もしかして一服盛ったのか?」

 「そうだ、貴様から美坂を取り戻すためにな・・・まあ死ぬことはないぞ」

 「ふふふ・・・ここで貴様さえいなくなれば佐祐理さんは私の物になるのだ」

 「く、くそっ・・・」

 「さあ美坂、迎えに来たぞ・・・あれ?」

 あたしは目を伏せて痺れている体を震わせていた・・・心の中に滾る怒りで!

 せっかくいい雰囲気だったのに・・・久しぶりに誰にも邪魔されなかったのに・・・許さない!

 「嫌い」

 「美坂?」

 「大嫌いだからどこかに行って!」

 「そ、そんな・・・」

 あたしのセリフに北川君は呆然となってふらふらした足取りで後ずさりながら、そのまま噴水の中に落っこちた。

 きっ!

 あたしは残っている久瀬を怒りを込めて睨みつける。

 「な、なんだ?」

 「この・・・変態! ストーカー! そんな男を佐祐理さんが好きになる分けないわよ!」

 「くっ、なんだとっ!」

 久瀬の手があたしの顔めがけて振り下ろされるけど、あたしは目を反らさない。

 ばしっ。

 でも、久瀬が叩いたのはあたしじゃなくてしかも目の前には祐一の背中があった。

 「祐一・・・」

 「お前なぁ・・・女の子に手を上げるなんて最低だぞ!」

 「相沢! 貴様っ・・・」

 満足に動かない体で祐一があたしを庇って久瀬の前に仁王立ちになる。

 そして久瀬の拳が祐一の顔を殴ろうとした時、腕を振り上げたまま固まっていた。

 よく見ると・・・久瀬の後ろに誰かいるわ・・・あ、あれはっ!?

 「何をしている」

 ぐさっ。

 「な、痛いじゃないかっ?」

 ぐさっ。

 「いててっ、刺すんじゃない!」

 「祐一に何をしたのか聞いている」

 「お、お前には関係ない」

 ぐさぐさっ。

 「いてててーっ!」

 「舞!」

 「あはは〜、佐祐理もいますよ〜」

 「佐祐理さん!」

 久瀬を刺している舞さんの後ろから買い物袋を持った佐祐理さんがニコニコして歩いてきた。

 舞さんはもの凄い目つきで久瀬を睨みながら剣先で刺していたけど、いつもと違って容赦が無いみたい。

 「夜食を買いに出かけたら舞が突然公園に行きたいって言う物ですから来てみたんですけど・・・」

 「祐一、ぴんちだった」

 「あ、ありがとう舞」

 「・・・ぽ」

 ちなみに祐一に見つめられて赤くなりながらも、久瀬を刺す手を止めることはなかった。

 この際今の舞さんは見逃すことにするわ。

 「さ、佐祐理さん、これは・・・」

 「佐祐理、あなたに名前で呼ばれるの不愉快です〜」

 「なっ・・・」

 よく見ると佐祐理さんのこめかみがひくひくしているし、その笑顔もどこか引きつっているわ。

 「舞、今日こそは遠慮しないでとことんやっちゃって良いですよ〜」

 「はちみつクマさん」

 その後、通報を受けた警察官が公園に来ると二人の男が素っ裸で更に丸坊主にされて噴水に沈められていたらしい。






 後日、この件のお礼の意味で祐一が舞さんと佐祐理さんに連れられて動物園に行ったけど見逃してあげた。

 どうも舞さんって名雪たちと違って純粋だから困るのよねぇ・・・。

 ちなみにあの日以来、北川君の姿を見たことがない・・・まあちょっと言い過ぎたかなと思うときも有るけど

 あの時だけは許せなかったから仕方ないわね。

 久瀬に関しては今度有ったらただじゃ済まさない、秋子さん伝授のこのジャムをたっぷりとご馳走してあげるわ。

 そうすれば二度と変な気起こさないと思うけど、あの変態に効果があるかどうか・・・。

 結局最後の最後でこうなっちゃったけど、結構楽しかったわ・・・ありがとう、祐一♪






 つづく。





 どうも、じろ〜です。

 前回よりらぶらぶにして本来のかおりんにしてみました。

 やっぱりらぶらぶなかおりんが書いてて楽しいです(^^)

 それにしても舞って純粋だと思うなぁ、少なくても真っ直ぐに思いをぶつける所は

 可愛くて抱きしめたくなるけどね・・・。

 さて、ここのところ影が薄い真琴と美汐が一発逆転を狙って祐一に迫ります。

 無邪気な真琴に翻弄される祐一、そしてかおりんと美汐の静かなる駆け引き・・・。

 意外に苦戦を強いられる我らがかおりんに、勝利の女神が優しく微笑む。

 次回、かおりんの愛は止まらない♪第七話「了承まで後一秒(意味不明)」(大嘘)

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