Original Works 『Kanon』



 Copyright(C)1999 KEY



 Kanon Short Story






  大学っていったい何を学ぶところなのかしら・・・ねえ、祐一?






 午前中の講義が終わりあたしと祐一、名雪、佐祐理さん、舞さんの五人で中庭に来ていた。

 もちろんお昼を食べる為なんだけど・・・はぁ。

 「あはは〜、今日は舞ががんばって祐一さんの為に作ってきたんですよ〜」

 「何? 本当か舞?」

 「・・・(ぽっ)」

 こくんと俯いて頷いた、年上とは思えない可愛らしさを感じさせる。

 「で、どれなんだ舞が作ったのは?」

 「・・・肉じゃがさん」

 真っ赤な顔して差し出した容器の中には見た目にも普通の肉じゃがが入っていた。

 「わ〜美味しそうだね、祐一」

 「どれどれ、もぐもぐ・・・!?」

 「祐一?」

 「んまいっ! 本当に美味しいぞ、舞!」

 どうやら嘘じゃないようだわ、祐一はすぐ顔に出るからね。

 「あはは〜良かったですね、舞♪」

 「うん、これならいつでもお嫁さんになれるぞ!」

 「・・・貰ってくれる、祐一?」

 「そ、それは・・・そのなんだ、なぁ・・・」

 「はえ〜舞っていつになく大胆ですね〜」

 「そう簡単にはいかないわよ、舞さん」

 あたしの言葉にこっちを向くと、舞さんはじっと見つめ返してくる。

 「・・・負けない」

 「あたしもね」

 「あはは〜、佐祐理も負けてはいられませんね〜」

 「佐祐理と一緒に貰ってくれる?」

 舞さんが同じ質問を祐一にすると、いきなり祐一は顔を真っ赤にして鼻を押さえた。

 「・・・ぐはっ」

 「何を考えたのかしら、祐一?」

 「すけべだよ、祐一・・・」

 「ぐっ・・・じゃあどういう事なのか説明してみろ、名雪?」

 「そ、そんなこと恥ずかしくて言えないよ〜」

 「えっちだな、名雪」

 「う〜」

 ふてくされて膨れる名雪が可笑しくてみんなが声を出して笑った。






 かおりんの愛は止まらない♪ 第五話






 Presented by じろ〜






 ふと、舞さんを見るといきなり持っていたフォークを茂みに向かって投げた。

 ぐさっ。

 「ぐああぁぁぁ〜〜〜〜っ!?」

 何かに刺さる音と変な悲鳴が聞こえたと思ったら、茂みの中から男が一人フォークを頭に

 突き刺したまま飛び出してきた。

 ん、どこかで見たような・・・誰だっけ?

 「な、な、何をするんだ!? 危ないじゃないかっ!」

 「・・・変態を退治しただけ」

 「はえ〜またストーカーですか、久瀬さん?」

 「ああっ、どこかで見たことあったと思ったら元生徒会長だったわね」

 「そうなんだ香里、でも今じゃ堕ちぶれてただの変態でストーカーなんだ」

 「う〜、変態はいやだよ〜」

 「相沢、貴様・・・」

 頭から血を流しながらもの凄い形相で祐一を睨みながら近づこうとした久瀬の前に、

 素早く舞さんが立ちはだかった。

 「な、なんだ?」

 よく見ると舞さんの手にはいつの間にか剣が握られているんだけど、いったいいつのまに?

 「お〜い舞、殺しちゃダメだぞ?」

 「そうですよ〜ゴミはくずかごにですよ、舞」

 「はちみつクマさん」

 ちゃきっ。

 「そ、そんな物振り回して良いと思っているのか?」

 「ゴミは黙れ」

 しゅっ!

 「のわぁっ!?」

 ぱさっ。

 みんなに見えない素早さで舞さんが剣を横に振るった瞬間、何かが地面に落ちた。

 それは・・・ぷっ。

 「なかなかイカス髪型だな、久瀬?」

 わ、笑っちゃいけないと思うんだけど・・・。

 「かっぱさんだ、かっぱさんだよ〜、祐一」

 ぷぷっ・・・だ、だめよ、笑っちゃダメ・・・ぷっ。

 「あはは〜、でもお皿がないから違いますよ〜名雪さん」

 皿とか・・・そう言う問題じゃ・・・無いような・・・ぷぷっ。

 「次は斬る、変態」

 「くっ・・・」

 久瀬は片手で頭のてっぺんを押さえて、もう片方の手で地面に落ちた物を拾うと足早に去っていった。

 「まったく、卒業してからもまだ佐祐理さんに付きまとっているんだよなぁ・・・」

 「あはは〜安心してください祐一さん、佐祐理には心に決めた人がいますから大丈夫ですよ〜」

 「そ、そうですか・・・」

 佐祐理さんはにこやかにしているが、言っていることはあたしに対する挑戦と同じだわ。

 「はい、それに舞がいつも一緒ですから全然怖くないですよ〜」

 「佐祐理は私が守る」

 「う〜、私もお母さんにあのジャムの作り方教えてもらおう♪」

 「憶えなくていい!」

 「どうして?」

 「おまえの必殺技は寝るだけで十分だ!」

 「う〜差別だよ、祐一」

 また膨れた名雪を見てみんなが笑っている時、あたしはお腹を抱え肩を震わせて必死に声を抑えていた。

 だって・・・つぼに入って所為で大声で笑いそうだったから。






 「大丈夫か、香里?」

 「つつっ・・・ふぅ、なんとかね」

 大学の帰り、祐一と商店街によって買い物しているんだけどまだあたしのお腹は痛かった。

 「そんなに我慢しなくても良かったんじゃないか?」

 「あのね、あたしのイメージが壊れるのは嫌だからよ」

 「そんなもんか・・・」

 本当に乙女心には鈍感なんだから、祐一って。

 「香里」

 「えっ・・・きゃっ!?」

 祐一がいきなりあたしを抱き寄せて、近くの壁際に移動する。

 ずしゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。

 次の瞬間、あたしたちがいた場所に何かが滑ってきたわ。

 「さあ、行こうか香里」

 「え、ええっ?」

 地面の上でうつ伏せのまま、羽根付きリュックを背負った女の子がぴくぴく痙攣しているようだけど、

 このまま放って置いていいのかしら?

 それにどこかで見たような・・・。

 「うぐぅ、避けた〜・・・って無視しないでよ、祐一くん!」

 「あら、あゆちゃんだったの・・・」

 「おお、そうだったのか! すまんなあゆあゆ」

 「うぐぅ、ボクあゆあゆじゃないもん!」

 「そうか、じゃあなっ」

 「うぐぅ、祐一くんのいじわるっ」

 「その通りだ、じゃっ」

 「うぐぅ、ボクの事嫌いなの祐一くん?」

 「襲ってこなければ嫌いじゃないと思うぞ、あゆ」

 「襲ってないもん、ただ抱きつこうとしただけだもん!」

 「ふ〜ん・・・あたし的にもそれはちょっと見過ごせないわね、あゆちゃん?」

 「え、えへへ〜」

 「笑って誤魔化してもだ〜め、そんな悪い子はお仕置きが必要かしら?」

 「うぐぅ」

 あゆちゃんが涙目になってあたしを見つめる・・・ふふっ、名雪のこと思い出したのかしら?

 「おい、香里・・・」

 「さああゆちゃん、覚悟は良いかしら?」

 あたしは微笑みを浮かべてゆっくりとあゆちゃんに近づいていく。

 「うぐぅ、ごめんなさい〜」

 と、いきなり泣き出してしまったから困っちゃったわ。

 「おいおい、何も泣くことはないだろう、あゆ?」

 「えっぐえっぐ・・・うぐぅ」

 祐一がちょっと乱暴にあゆちゃんの頭をくしゃっと撫でる、相変わらず優しいわね。

 「ごめんねあゆちゃん、冗談よ」

 「うぐぅ、本当に?」

 涙でぐちゃぐちゃになった顔であたしのことを見つめる・・・なんか犬みたいだわ。

 「ええ」

 あたしも祐一がしたように優しくそっとあゆちゃんの頭を撫でてあげる。

 「えへへ〜」

 あゆちゃんもようやく笑ってくれてなんとか雰囲気も和んだあたしたちの後から、

 一人のおじさんがこっちに向かって走ってきた。

 「はぁはぁ・・・おおっ! あんたたちが捕まえてくれたのか?」

 「はい?」

 そのおじさん、かなり汗だくになっている様子からずっと走り回っていたらしい。

 「うぐぅ」

 ん、あゆちゃんがびくびくしているけどなにかしら?

 「ま、まさかあゆ、おまえまた・・・」

 「うぐぅ、実はその・・・えへへっ」

 怒っているおじさん、笑っているあゆちゃん、そして頭を押さえる祐一と側にあった紙袋から見えている

 焼きたてのたい焼きを照らし合わせた結果、あたしには理解できた。

 「香里」

 祐一があゆの首根っこを掴んであたしに差し出す・・・仕方がないわね、これもあゆちゃんの為だもの。

 「覚悟は良いかしら、あゆちゃん?」

 「うぐぅ、ボ、ボク・・・」

 そして夕日に照らされオレンジ色に染まる商店街から、女の子の泣き叫ぶ声と風船が割れたような音が

 何回も響き渡り夕焼けの空に吸い込まれて消えていった。

 前代未聞の公開お仕置きを、夕方の商店街ですることになろうとは・・・暫くあそこには買い物に行けないわ。

 あたしのイメージがぼろぼろだわ・・・もうっ!

 はぁ〜・・・今日は朝から変態だの食い逃げだので、あたしはすっかり疲れちゃった。






 家に帰ったあたしは夕飯の後、先にシャワーを浴びてさっさと寝ることにしたわ。

 「香里、もう寝ちゃうのか?」

 「今日は疲れたからもう寝るわ、お休みなさい祐一」

 「お、おう・・・ちぇっ」

 くすっ、祐一にはお預けさせちゃったみたいだけど仕方がないわね。

 ふあぁ〜・・・お休みなさい。






 「何をしているんだ、貴様は?」

 「見てわからんのか?」

 「わからんから聞いているのだ」

 「ちょっと食あたりで動けないだけだ・・・」

 「ふん、情けない奴だな」

 「貴様もなっ」

 「な、何をする!?」

 「その髪型イカスな、かっぱのマネか?」

 「う、うるさいっ」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「虚しいな」

 「まったくだ」

 「こうなったら今度は一緒にやるしかない!」

 「その様だな・・・狙いはただ一人!」



 「「くっくっくっ、待ってろよ相沢〜っ」」



 夢の中で二人の男が何かを相談していたようだけど、翌朝目が覚めたらすっかり忘れていた。

 ただ、何かが起きるという不安だけが心の片隅に残った。






 つづく。






 どうも、じろ〜です。

 毎度の事ながら遅くなりましたが、かおりん第五話です。

 北川に続いて今度は久瀬に登場してもらいましたが、さっさと退場してもらいました。

 前回、舞に頭のてっぺんを剣でなぎ払われたので久瀬のヘアースタイルは現在かっぱさん状態です(笑)

 しかし香里のイメージが損なわれていくようなので次回は挽回したいですね(^^;

 でも、恋する乙女は強くなると自分の中で思っているのが出てしまうようです。

 もっと可愛いかおりんを見せるよう努力します。

 次回、かおりんの愛は止まらない♪第六話「男の子と女の子、祐一はどっちが良い?」(大嘘)

 

☆感想はこちらまで☆

お名前:

メールアドレス:

ホームページ:(お持ちであれば)

感想対象SS:(変更せず送信して下さい)

メッセージ:



 じろ〜さんのホームページはこちらへ

 第四話に戻る    第六話に進む

 メニューに戻る