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 AIR Short Story






 「なんて言うか……凄いな」

 「そうだろう……ここは男は俺たちしかいない」

 「しかも美女美少女ばかりだ、一部を除くがな」

 ちなみに柳也の見解では一部とはポテトとみちるらしい。

 「まあ観鈴と神奈には良い友達になると思って知り合いに声を掛けた」

 「それはいいな、あいつもこんな大勢で遊んだ事無かったからな」

 「その分を取り戻すのさ、今はその自由がある」

 「そうだな、今度隣町とか行ってみるか……」

 「まだまだ見てない物とか沢山あるだからきっと驚くぞ」

 「裏葉も驚きそうで楽しみだな」

 「隣町と言えば遊園地と言う場所があって、一年中お祭りをしている様な感じだ」

 「それは神奈が喜びそうだ」

 「あんたらなにやってんのやー?」

 「いや、ちょっといろいろとな」

 「ああ、これからの事とか話していた」

 「これから〜きまっとるやないか、西瓜割りや!」

 「いやそうじゃなくて……」

 「往人、この続きはまた今度でもいいだろう」

 「そうだな……」

 「時間がもったいないからはやくせなあかん!」

 ピンクのビキニで仁王立ちする晴子に降参して上げた手をそのまま引かれ、往人と柳也はみんなの元に

 向かった。

 二人の周りには少女から美女までそろっており、色とりどりの水着に目を奪われても仕方がない。

 「往人」

 「んあ?」

 「近くで見ると更に良いな」

 「むさい男より女を選ぶのは常識だ」

 二人して頷いていると往人の手を引っ張るので、そちらを向くと観鈴がちょっぴり頬を赤くしていた。

 白いワンピースの水着姿を披露する観鈴は、照れながら上目使いで往人を見つめる。

 「ど、どうかな、往人さん?」

 「うん、良く似合っているぞ観鈴」

 「にはは〜」

 「ゆ、往人!」

 「どうした神奈?」

 「は、初めて着たのだが……どうじゃ?」

 神奈の言いたい事も解っていたが、わざとらしく聞いて見つめるとぼそぼそと呟く。

 観鈴と同じ白の水着に自慢の黒髪が映えて可愛らしさが溢れ出んばかりに輝いていた。

 さすがにちゃかすのもなんだから、神奈の頭をぽんと叩くと頷く。

 「うん、可愛いぞ」

 「!! そ、そうか……か、可愛いか」

 「良かったね神奈ちゃん」

 「うむ、ぶい!」






 The 1000th Summer Story



 Re−Birth



 Presented by じろ〜






 第十話「花火」






 「よし、じゃあ一番は神奈からだ」

 ビニールシートの上に西瓜を置いて準備が整ったので、往人は神奈を指名した。

 「うむ、余の実力を披露するか」

 「神奈ちゃん、ふぁいと!」

 「……がんばって」

 「がんばれー!」

 「いけいけー」

 「ぴこぴこっ」

 観鈴に続いて美凪、みちる、佳乃、そしてポテトが応援する。

 目隠しをしてその場でくるくると三回ほど回された神奈は、ふらふらしながらも西瓜を目指して

 歩き始める。

 「こっちやで〜」

 「神奈ちゃん、後少し」

 「いやいや、もっと右の方だ」

 「あー、行き過ぎだよ、戻って〜

 「ぴっこぴこ〜」

 「神奈さま、そのまま真っ直ぐです」

 「う、うむ」

 よたよたとみんなの声を聞きながら、西瓜に近づいていく神奈の口元は綻んでいた。

 「よし、そこだ神奈!」

 「ていっ」

 ぼこっ。

 鈍い音と共に神奈の振り下ろした木刀は、見事西瓜を二つに割った。

 神奈は慌てて目隠しを取ると、足下で割れて中身が見えている西瓜を見てにんまりと頷く。

 「どうじゃ、余の力を見たか!」

 「やった〜神奈ちゃん!」

 「……お見事」

 「すっごーいっ」

 「ぴこぴこ〜♪」

 「やるやないか〜」

 「ふむ、やるな」

 「神奈さま、ご立派です」

 みんなの声援に神奈も胸を張って誇らしげに答えると、往人の前に歩いて来るとその顔を見上げる。

 「どうじゃ?」

 「やるじゃないか」

 「見事だったぞ神奈」

 「ぶい!」

 往人と柳也に誉められて喜ぶ神奈の笑顔は、空に有る太陽の様に眩しく晴れやかだった。

 「さあ、次は誰じゃ?」

 神奈の声にみんなが次々と手を挙げて、彼女の周りに集まった。






 西瓜割りの後はみんな日光浴や泳いだり砂山作ったりと遊んでいる中、柳也と裏葉は少し離れた岩場で

 肩を寄せて海を見ていた。

 「……いいのでしょうか」

 「なにが?」

 「こんなに満ち足りた日々を過ごして……」

 「誰が俺たちを咎められる?」

 「ですが……」

 「今の俺たちは追われる者じゃない、それが現実だ」

 「はい」

 「なら、もう一度掴んだ機会を、幸せを離す事はない」

 「はい」

 「また子供でも作るか?」

 「も、もうっ、柳也さま」

 「その水着にそそられたしな」

 「そのような事ばかり言って……」

 「いやか?」

 「知りませぬ……」

 「裏葉」

 「あっ」

 ちょっと強引に裏葉の頭を自分の方に引き寄せると、赤くなった裏葉の弱い抵抗はすぐになくなり

 目を閉じて少し顔を上げて何かを待つ仕草をする。

 「が、がお……」

 「そこだ、いけっ」

 「……ごくっ」

 「……ぽっ」

 「にょへー」

 「わわ〜」

 「ぴ〜こ〜」

 「…………」

 「…………」

 ゆっくりと柳也の手を解くと、立ち上がり振り返った裏葉は胡乱とした目で見つめ、低い声で

 そこにいた者達を問いただす。

 「何をしているのですか?」

 「に、にはは〜」

 「ちっ……」

 「残念じゃ」

 「……ちぇー」

 「むー」

 「わ、わた、わたしっ」

 「ぴこ?」

 「そこに座りなさい!!」

 裏葉の怒号にびびってしまったのか、覗きをしていた往人たちはその場で正座させられて、

 それから一時間以上説教させられた。

 終わった後は、裏葉は気が済んだのか柳也を連れてどこかに行ってしまったが、足がしびれて

 動けなくなって寝転がっていた。

 「くっ、やはり怖いな……」

 「が、がお……いたた〜」

 「まだまだ本気じゃないぞ、裏葉は……つつっ」

 「……痛いです」

 「しびしび〜」

 「あいたたた〜」

 「ぴこぴこ〜」

 「……お前が痺れるわけないだろうっ!」

 おもむろに痺れたふりをしているポテトを掴んだ往人は、そのまま沖の方に放り投げた。

 「魚の餌になってこい!」

 「ぴ〜こ〜……」

 しかしいつもの様に気がつくと足下にいるので、よけい疲れた往人であった。






 そんなこんなで日も暮れて、夜になってからのもう一つの遊びを始めた。

 「いくぞ、それっ」

 しゅわ〜〜〜〜っ。

 「おおっ、綺麗じゃ!」

 吹き上げ式の花火に火をつけると、そこから赤や青の火花が辺りを明るく照らした。

 「往人さん、これもお願い」

 「おうっ」

 次々と火をつけて燃え上がる火花をみて、神奈のみならず裏葉や柳也もその綺麗さに感動していた。

 「柳也、裏葉、楽しいか?」

 「ああっ」

 「はい、楽しゅうございます」

 「そうか、余も楽しいぞ!」

 花火の光に照らされて、神奈の笑顔は夜でもはっきり二人に見えた。

 何回見ても嬉しく感じるこの笑顔が、二人の望み……夢見ていた光景だった。

 「……国崎さん」

 「おうっ、こっちもか……って遠野、それは打ち上げ花火だ!」

 「……火を」

 「こっちに向けるんじゃない」

 「……悩殺できなかったからこれで」

 「それじゃ滅殺だ!」

 「……ちぇー」

 「やれやれー、なぎー!」

 「あほっ」

 がつん。

 「にょへー」

 と、奇声を発しながらも往人からライターを奪ったみちるは、手に持っていたロケット花火に火をつけた。

 「くたばれっ、国崎往人!」

 「ば、ばっかやろうーっ!」

 ピーッ。

 どぼん。

 ロケット花火に追いかけられて、夜の海にダイビングした往人は、なんとか攻撃を回避した。

 「……みちる、それはだめ」

 「ごめん、美凪」

 ざばー。

 「謝る相手が違うだろう!」

 「にょほー、まだ生きてたかー」

 みちるに食ってかかろうとする往人の前に、美凪はポケットから白い封筒を差し出した。

 「パチパチパチ、生きててよかったで賞」

 「……つ、疲れた」

 とにもかくにもこうして楽しい夏の日は、みんなの良い思い出になったのは確かだった。






 つづく。






 次回、最終話「夏影」



 やっほー、皆さんお元気ですか?

 風邪引いちゃいましたー、お仕事一週間休みましたー(泣)

 ※注意 火の付いた花火を人に向けては行けません。

 往人ってギャグキャラじゃ無いはずなんだけど、良いとこなしです。

 まあ、美味しい思いが待っているので今回はぼろぼろですね。

 さて、次回で最終回になります。

 神奈が観鈴が求めたもの、そして往人の隠した思いが交差する。

 新しい物語を始める前に、これが区切りとなります。

 

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