「ほら次はお前が鳴らす番だぞ、真琴」
何も無い丘の上で祐一は自分の胸に抱いている真琴に話し掛けた。
「どうしたんだよ、ほらこうやって鳴らすんだぞ」
そういって、祐一は真琴の手首につけた鈴を鳴らした。
―チリン、チリン―
綺麗だが、どこか寂しい鈴の音が丘の上に広がる。
「ほら、分かったか?じゃあやってみろ」
祐一は真琴に話し掛けるが、真琴は動かない。
「ほら、真琴、目を開けて鈴を、すずを鳴らすんだ」
祐一の目に涙が浮かんでくる。
「頼むから、すずを鳴らしてくれ、たのむから真琴」
堪えきれなくなった涙が祐一の頬を伝って、真琴の顔を濡らす。
そして、真琴の体が消えた・・・
「真琴ーーーーーーーーー!!!!!」
Kanon 「未来へ・・・」 第一話
「おはようござ、大丈夫?どうかしたの?」
朝、リビングにやってきた祐一をみて、秋子は心配そうに聞いた。
「ええ、久しぶりに真琴の夢を見てしまいました」
「そう」
真琴が消えてからすでに一年が過ぎていた。
その間に祐一は名雪の協力を得て、なんとか3年に上がり、大学にまで合格していた。
最近なんとか吹っ切れたと思っていた祐一にとって、今日の夢は辛く、そして切なかった。
「おはよう、祐一大丈夫?またあの夢?」
起きてきた名雪がすぐに聞いてくる。
「ああ、大丈夫だ。それより早くしないと、遅刻するぞ」
「うん、分かった。すぐに食べるね」
そう言うと名雪は席につき、イチゴジャムをパンに塗る。
「ジャム、ジャム、ジャム」
うれしそうに訳のわからない歌を唄う名雪を見て祐一は笑う。
「なんだよ、その歌は?」
「ジャムの歌」
間髪入れず、名雪がそう答える。
「馬鹿か、お前」
「そんな事無いよ、祐一」
頬を膨らませながら名雪は文句を言う。
「分かったよ、それより時間は?」
「8時13分・・・。うわ、遅れる」
「何!急げ名雪!」
そう言うとパンを食べている名雪を無理やり立たせる。
「うー、パン。イチゴジャム・・・」
「いいから行くぞ」
恨めしげに祐一を見る名雪の言葉を無視して、祐一は急いで玄関を出る。
「イチゴジャム・・・」
つぶやく名雪を横目に見ながら、祐一は微笑む。
「どうしたの?」
「いや、なんでも無い」
「へんな、祐一」
頭にクエスチョンマークをつけている名雪を無視して走る。
『ありがとう、名雪』
あとがき?
初めましてBASARAです。もしくはどうも、BASARAです。
今回はKanonの真琴エンドの一年後と言うことで、続き物です。
ですが、続きを考えていません。
真琴を復活させるか?名雪をヒロインにするか?以外に香里とくっつけるか?
と色々ネタはありますが、どうするか考えていません。
まあ、気長に続きをお待ちください。 2000/1/11 BASARA