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3.聖司の呼び出し〜聖司の旅立ち

(2004/04/18更新)
このコーナーは製作者の主観による解釈です。あくまで参考程度に受け取ってください。
本当は、あなた自身の感じる解釈が一番正しいのですから。

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杉村とニアミス (1999/02/21)

 朝、雫は母親が起きてこなかったために学校に遅刻しそうになります。学校の手前で前日振ったばかりの杉村とニアミスしますが、杉村は雫に「先行っていい」と言われると、先に行ってしまいます。雫はその場で一瞬立ち止まりました。

 意味ありげに一瞬立ち止まった雫の気持ちは2つ考えられます。
 1つは、杉村は昨日までのように付き合ってはくれないと感じたこと。杉村は、以前なら雫が好きですからきっと雫を待ち一緒に学校へ行ったでしょう、しかし振られたあとのこの日は先に行ってしまいました。雫はもう元の関係にはもどれない寂しさを感じ立ち止まったことが考えられます。
 もう1つは、みんな先に行ってしまい自分だけが取り残されているように感じたこと。今度は聖司の影響ですが、聖司はきちんと進路を考え自分よりはるか先を行っているのに自分は何も考えていない。そう劣等感を持った時に、杉村が先にいってしまい、この状況が「遅れる」というキーワードの下に一致し、思わず立ち止まったと考えられることです。

 この場面で杉村はどういう心境だったのでしょうか。
前日に雫に振られ、夕子が自分を好きなことを知ったために、雫にまったく興味を失ってしまったことや、間を持たせる自信がなかったことが考えられます。少なくとも遅れそうだから先に行ったとは、流れからは考えにくいと思われます。

聖司の呼び出し (1999/02/21)

 学校へ着くと、自習ということで雫はほっとします。しかし夕子の話によると、夜聖司と歩いていたのを見られ、恋人同士との噂が立っているとのこと。そんな話をしているところに杉村がやってきて夕子に謝りました。

 雫はこの時思わず、杉村から目をそむけます。やはり気まずい感じになってしまっています。夕子は杉村の謝罪で幸せそうなため息をつきました。

 休み時間、聖司は突然雫のクラスへ来て雫を呼び出しました。クラスの人は"噂の彼氏"が来たという認識があるのか大騒ぎになります。雫は「違う」と叫びながら廊下へ出て聖司と話します。しかし、視線が気になり結局屋上へと向かいます。

 このシーンの動きは、見ていて圧倒されます。自分自身がクラスメートに混じって、騒いでいるような気分になります。中学生ですから、ちょうど思春期のどまんなかということで、恋愛に関しては一番興味を持っているのでしょう。クラスメートは驚き、喜び、叫びとまるで動物園と化しています。雫のこの時の心境は「なんで・・・」となっているに違いありません。
 聖司は、なんとも思っていないのではないでしょうか、もし何か思うのであれば、わざわざ教室まで雫を呼びに行かないでしょう。聖司は自分を貫きまわりに流されない強さを持っているので、冷やかしなど怖くもないと思っていたのかもしれません。

聖司の告白(1) (1999/03/01)

 雫は、聖司を屋上へ連れて行きました。外は雨が降っていて2人は屋上出口で話はじめました。聖司はイタリア行きが決まったと雫に話し始めました。「雫は、誤解されるくらい構わないけど・・・」と、言います。

 雫は、聖司がすでに自分と恋人のつもりでいると感じて言ったのだと思われます。雫にしてみれば、自分の夢を持ち、気になる存在ではあっても、まだ好きとは言えない存在の聖司が、クラスにまで押しかけて自分を呼び出し、「一番はじめに教えたかった」と、まるで恋人同士のような言葉を言われたために、思わず動揺してしまったことが考えられます。

 聖司は、イタリアへ行くことが決まりましたが、とりあえず3ヶ月試しにやってみるという条件付きでした。親は聖司が若いということもあって、その考え方の成熟度に心配があるでしょうから、当然のように条件付にしたことが考えられます。しかし、聖司は本気で決めていたようで、親に反発しています。もし、逃げ道を作れば、何かあったときに、自分が逃げてしまう可能性があるから、逃げ道は作らない方が良いと考えているようです。「自分の道は自分で創る」そういった考えがあることが伺えます。

 聖司の考えは正しいと思います。人間は弱いですから、逃げ道を作ると、どうしてもそこに逃げたくなります。ですから、本気で何かをしたい時は、背水の陣を組むことが必要だと思います。逃げ道がなければ、何かあっても真っ向から立ち向かい、真剣に物事に取り組めると思います。前にも同じようなことを書きましたが、真剣に取り組んだ上での失敗は、成功への道標になります。

 聖司の親の考えもまた理解できます。聖司はまだ若く、責任感というものがどれほどあるのか、おそらく親でも未知数でしょう。そんな状態で自分勝手に外に出たいといわれても、当然出せるはずがありません。もし、中途半端に「やっぱりやめた」となれば、取り返しがつかないからです。本気かどうか判断できないのであれば、親としては様子を見ることが必要だったと思われます。

聖司の告白(2) (1999/03/01)

 雨があがり、二人は屋上へ飛び出し「虹が出るかもしれない」と手すりのところまで行きました。自分たち街を見渡すと、雫は突然、「クレモーナってどんな街かな?素敵な街だといいね」と言いました、聖司は「古い街だって、ヴァイオリン作りの職人がたくさん住んでるんだ」と、答えました。

 雫は街を見渡し、自分達の住む街はこんな感じだと思い、聖司の行くクレモーナはどんなところなのだろうと想いが移ったようです。外に出て行く聖司にとってこの街は、まさに故郷になります。雫は、聖司の気持ちになって考えた時、この街を故郷として認識する擬似体験を味わったかも知れません。

 雫は、素敵な夢を持った人と同じ高校へ行ければ、素敵な何かがあるのではと思っていたのでしょうか。「同じ高校へ行けたらいいな」と考えていたことが雫により言われました。しかし、聖司が本気で進路を考えていることを知った今、中途半端にしか進路を考えなかった自分に嫌悪感を持ち、「テンでレベル低くて、やんなっちゃうね」と、いっています。雫はこのとき、前日以上に本気で自分の進路を考え始めたようです。きっかけはどうであれ、人生において重要なことを始めました。

 聖司はこの屋上でついに雫に告白します。
「おれ、図書カードでずっーと前から雫に気が付いていたんだ」
「おれ、隣の席に座ったこともあるんだぞ」
「おれ、お前より先に図書カードに名前を書くためずいぶん本読んだんだからな」
「おれ、イタリアへ行ったらおまえのあの歌うたってがんばるからな」
聖司は遠まわしな言い方ですが、ついに告白しました。

雫は、小さくうなづいたあと、「私・・・」と言いかけると、沈黙しました。

雫は、クラスメートを追いかけ校舎の中に入ると思わず泣き出してしまいました。この涙は、好きなのにレベルが違うために聖司と同じ地平に立てない自分への悔しさの現れだと思います。同じ地平に立てないために、先に沈黙してしまい、クラスメートを追いかける振りをして、思わず逃げ出したのだと思います。

雫の悩み (1999/03/12)

 夜、食事を終えた雫はコンビニへ行き夕子と待ち合わせます。夕子は塾をサボって雫の相談に乗るようです。2人は夕子の家に行き話を始めます。

夕子:「男の子ってすごいなあ」 雫:「相手がカッコ良すぎる、同じ本を読んでいたのに片っぽはそのまま、片っぽは進路を決めててどんどん進んでいっちゃう」
夕子:「天沢君ってちょっと取っ付きにくいけど、ハンサムだし勉強もできるって言ってた」 雫:「ますます落ち込んじゃう」
夕子:「好きならいいじゃない、告白されたんでしょ」 雫:「それも自信なくなった」
夕子:「私なら、毎日手紙書いて励ましたり励まされたりするけどなあ」 雫:「自分よりずっと頑張ってる奴にガンバレなんて言えない」

 この場面は夕子の話に対し雫が答えることで構成されます。
 雫は、聖司によほどショックを受けたのでしょう、過去を悪いものとして振り返り自分自身を苦しめるだけの、ネガティブ状態になっていることがわかります。
 夕子は、自分がどうであれ、好きな人と一緒にいられれば幸せなのではと考えているのに対し、雫は、相手より自分が劣っていると感じて、だから何も出来ない、自分も同じレベルにいないと付き合えないと考えているようです。

きめた!私物語を書く (1999/03/12)

 夕子は雫の話を聞いて雫を理解できませんでした。「雫が相手とどうなりたいのかわからない」「進路が決まってないと恋もできないわけ」と雫に言います。
 そして、「雫にだって才能あるじゃない、カントリーロードの訳詞なんか後輩達大喜びしてるもの」「私と違って言いたいことはっきり言えるしさ」といいました。
 雫は突然「そんな奴いくらでもいるよ」というと、決意を固めたように「あいつは自分の才能を試しに行くの。だったらあたしも試してみる」「決めた、私、物語を書く」といいました。
 夕子は現実的に「もうじき、中間(テスト)だよ」といいましたが、雫はまったく気にとめず「ありがとう夕子、なんだか力が沸いてきた」と言って、夕子の家を後にしました。
 雫は「簡単なことなんだ。自分もやればいいんだ」と言って歩いていると、ムーンが前を通り過ぎました。 雫は家に帰ると早速物語を書き始めました。

 ネガティブな状態の解決は、夕子が告白された時の解決法と同じで、自分で考え自分で答えを見つけることが重要です。その過程において、気持ちを聞いてくれる人がいると解決は早くなります。気持ちを打ち明けることで冷静になることが出来るからです。もし、頭だけで考えていればいつまでたっても解決できないでしょうし、それどころかますます落ち込むと考えられます。雫は悩みを打ち明けられる親友という存在がいることで、あっという間に解決できたのではないでしょうか。

 雫はついに自分の進路を見定めることにしたようです。単に聖司に追いつき付き合いたいという考えからですが、もちろん真剣に取り組むわけで、自分の生き方を見つけたと言ってもいいでしょう。

 ムーンは自由に生き、自分の意思で行動しています。まわりに流されず自分の生き方を持つことの象徴としてこの場面に登場しているように思います。

西老人の話 (1999/03/12)

 西老人は雫から”バロンを主人公にした物語を書きたい”と聞くと、雫の物語の最初の読者にしてくれることを条件に出しました。
 雫が渋っていると西老人は石を持ってきて話を始めます。「職人も同じ、最初から完璧なんか期待してはいけない」「この石にはエメラルドの原石が含まれているが、雫も聖司もその石みたいなもの。まだ磨いていない自然のままの石。そのままでも悪くはないが、物語を書いたりヴァイオリンを作るということは違う。自分のなかに原石を見付け時間をかけて磨くこと」「一番大きな結晶は磨くとつまらないものになってしまう。もっと奥の小さな結晶の方が純度が高い、いや見えないところにあるかもしれない」
 雫は、話を聞き終わると「自分にこんなきれいな結晶があるかどうか怖くなっちゃった」「でも、書きたいんです。書いたら一番にお見せします」と言いました。

 西老人の話は、石を例えとして話されています。簡単に説明すれば「最初から完璧につくれるはずがない」「見えている部分の才能の源泉を見つけ出し、そこを磨いていくんだ」ということです。
 すでに見えている才能でも、その才能を発揮する元になっている才能、その凝縮された(身のつまった)優れたものを見付けだし、時間をかけてゆっくり丁寧に磨くことが必要だと聞こえます。決して妥協しない、完璧のありえない、一生かけた才能磨きです。

いざ、お供仕らん。ラピスラズリの鉱脈を探す旅に (1999/03/12)

 帰り道、ラピスラズリという言葉から、バロンが現れ、雫を物語へと導きます。
 「いざ、お供仕らん。ラピスラズリの鉱脈を探す旅に」
 バロンはそう言うと、雫に崖から飛び降りるように促します。雫は勇気を振り絞り足を踏み出すと、体は気流に乗り空を飛びました。

 このシーンは、西老人のインスピレーションを受け、自分自身と重なって物語が始まっていくことがわかります。
バロンが「ラピスラズリの鉱脈を探す旅に」と言うのは、雫が「自分の原石を探しに行く」ということにつながり、
崖から飛び降りることは、未知の領域に飛びこんでいくこと。
「遠くのものは大きく、近くのものは小さく」というのは、人生の目標が大きくても、小さなことを積み重ねて行けば達成できるということにつながります。
 全般の流れで見ると、「自分を探すために、これまで怖くて踏み出せなかった部分に飛びこむ、実は怖いと思っていたことでも飛びこんでしまえばなんてことはない。そして目標は大きく見えるが一歩一歩進んで行けば必ず達成される。」となります。

 「自分には出来っこない」、そんなことを考える前に、まず一歩を踏み出してみよう、後は進んで行けばなんとかなる。そんな思いが込められている場面だと思います。
雫のカントリーロードの歌詞にもつながりますね。

木版画 (1999/03/12)

 雫は、階段を駆け下り図書館へ向いました。図書館へ着くと、普段読まないような学術文献を持ってきて調べものを始めます。雫がヴァイオリンについて調べているときでしょうか、ふと開いた本の1ページに、牢獄でヴァイオリンを作っている絵の木版画があり、雫の目にとまりました。

 牢獄でヴァイオリンを作る絵の版画、雫はなぜ目が止まったのでしょうか。この場面ではかなり意味ありげに版画が出てきます。版画の絵を見るとどうも中世ヨーロッパの雰囲気があります。魔女狩りのようなものも行われていたということを歴史で習ったような気がします。
 このことから、版画の職人は木から美しい音が出るように魔法をかけた魔術師として捕らえられたのではないかと想像されます。職人は捕らえられてもなお、自分の信念を信じヴァイオリンを作りつづけた、そんな様子を版画にしたのではないかと思います。
 雫は絵を見て、周りがどんな状況でも、どんなに辛いことがあっても、決して挫けることなく自分の道を信じ貫いた、そのヴァイオリン職人の心を感じたために、その版画に目がとまったのではないかと思います。

穏やかな時間 (1999/03/12)

 ふと聖司が雫の前に現れます。聖司は「じいちゃんに聞いてここだと思った」と言っています。雫は聖司はもう出発してしまったと思っていたようで、とても驚きます。聖司は明日行くというと、雫が調べ物を終わるのを待つことにしました。

 「パートナーがいるっていいな」そんな気持ちになりました。不安だらけの時に、自分を信頼してくれる人がいるとすごい安心感を得られます。このカップルの場合、傷をなめ合うのでなく、お互いを見て成長してゆけるカップルですので、頼れる相手としても信頼感は相当なものでしょう。
 この場面では、雫と聖司はふと見つめ合いかなり良い雰囲気になっていることがわかります。

旅立ち (1999/03/12)

 雫と聖司は、図書館の前で話はじめます。
聖司:「送れなくてごめんな」 雫:「来てくれてとてもうれしかった。見送りには行けないけど帰りを待ってるね。」
2人は手をつなぎ別れを惜しみます。
雫:「私、泣き言ばかり言ってごめんね。私も頑張るね。」
二人を車のライトが照らします。
聖司:「じゃ、言ってくる。」
雫:「いってらっしゃーい」

車のライトはそれぞれの出発を祝福するかのごとく、2人を照らし、輝かせました。
2人はそれぞれの目標に向けてとうとう旅立ちました。試練はこれから、でもきっとなんとかなるでしょう。
恐れるべきものは、わずかに最初の一歩だけですから。

 


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(C) Ryoukan