映画「耳をすませば」より 地球屋にて 〜西司郎の語ってくれたこと〜
1996年1月25日発売 徳間ジャパンコミュニケーションズ 2427円(税抜) TKCA-70810
詩/宮崎駿 朗読/本名陽子 のアルバムです。BGMに本名さんの朗読という構成です。時間は25分程度ですべて終わります。
1.丘の町
コンクリート・ロード どこまでも つづいてる 森をきり 谷を埋め 川を殺し 西東京 多摩の丘 たちならぶ白い家 ふるさとは コンクリート・ロード
2.怪猫ムーン
太ってるの ものすごく
尻尾なんかもこ〜んなにあって とても憎たらしくて 無愛想で 片耳だけが黒くって デブのくせに敏しょうなの
丘中の猫と犬をバカにしていて 人間なんか ぜ〜んぶシカトしていて あっちこっちで いろんな名前で呼ばれていて とっても寂しそうなのに とっても元気なへんな猫
3.コンビニエンス・ストア
一体何度通ったろう 夜道の暗がりに溶け込んで サンダルの音を聞きながら歩いていくと 近づいてくる光のゾーン
人懐かしい気配にひかれて通った店
いつもの雑誌 いつものスナック まぶしい天井 眠そうな店員 カラッポなものはカラッポなのに 近くの自販機で買ってもよかった 缶ジュースをぶら下げてて また暗がりに戻って 溶け込みながら歩いていく
振り返ると そこだけ 光輝くゾーンが遠ざかっていく
ほら 角を曲がったとたん あそこがまた懐かしくなる
3.半分だけの窓
古い部屋を二段ベッドでふたつに仕切って 小さな窓もふたつに仕切って 谷底みたいな私の部屋の小さな机
本から眼をあげて半分だけの外を見ても いつもおんなじ 丘と高圧線 半分だけの空
あの丘からこっちを見たら 団地の中のひとつの棟のありきたりの沢山の窓のそのひとつの狭い穴から とび立ちたがっている私が見えるのかしら
それとも 臆病に様子をうかがう私が見えるのかしら
5.バロン
さあ でかけよう 出発の刻が来た 地図と磁石 みがきあげた靴に帽子 世界を股にかけ 出会うべき人をさがしに 胸をはり アゴをひき 力まず おしゃれに いつも皮肉な微笑に 熱い心をくるんでいこう 時代の嵐 愚かな思想 狂気と死の丘をこえ 世界に向かい旅立とう
6.地球屋にて〜西司郎の話してくれたこと〜
この店にあるもの達は その昔職人達が心をこめて 作ったものばかりなんだよ
使いふるされ 忘れられ 壊れたまま埃にまみれて 私の手元にたどりついたのだ
汚れを落として アトリエに置いて ゆっくり ゆっくり 言葉をかけながら なおしていくと 少しずつみんなが 話してくれるようになる
ちがう ちがう オーナー達の性悪なことや 部屋のかたわらで 眺めてきた 人間共の悲喜劇についてではないよ
そんなことは どうでもいいんだ
このもの達をつくった職人達について 話してくれるんだよ
職人達が どんな想いで木を削り ニスを選んだかを・・・・・・・
たしかな眼が 風雪にさらされた 木々のわずかなクセを どれだけ正しく読み取ったかを・・・・・・
木にたいする彼等の尊敬を・・・・・・・
こめられた職人達のひそやかな自負を誇りを・・・・・・・
教えてくれるんだ
7.ヴァイオリンをつくる少年
だれもいない アトリエの片すみで少年は 自分の夢を削りだしている すべての屈折を願いを その指先に集めて
三百年前にきりたおされ 古い家屋のハリとなって 屋根を支えて来た かえでの材の祖父からもらった そのひとカケラの木片から うまれた日から 十数年たくわえて来た 経験のすべてと 覚醒した感覚の 研ぎすまされた一点を 丸のみの刃先にそえて
ヴァイオリンを 未来を 音楽を 限りない未来を 削りだしている少年
8.カントリー・ロード
カントリー・ロード この道 ずっとゆけば あの街につづいてる 気がする カントリー・ロード
ひとりぼっち おそれずに 生きようと 夢見てた さみしさ 押し込めて 強い自分を 守っていこ
歩き疲れ たたずむと 浮かんでくる 故郷の街 丘をまく 坂の道 そんな僕を しかっている
どんな挫けそうな時だって 決して 涙は見せないで 心なしか 歩調が速くなっていく 思い出 消すため
カントリー・ロード この道 故郷へつづいても 僕は行かないさ 行けない カントリー・ロード
カントリー・ロード 明日は いつもの僕さ 帰りたい 帰れない さよなら カントリー・ロード
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(C) Ryoukan