人の数は出会いの数
出会いの数はドラマの数
キミに会えてホントによかった

哲弥編はひとまず終了
あの女性もやって来た

そこにあるのは素敵なひととき
ハートフルファミリーレストラン
Piaキャロットへようこそ!!




Piaキャロットへようこそ!!2SS
written by FUE Ikoma
Muchos Encuentros
第3話『これからも』
Guest:SAKAMAKI Tetsuya & KIRIYA Kozue





「はぁ、はぁ、はぁ、待てって、言ってるだろ」
「はぁ、はぁ、はぁ、くっ、離してよっ」
 ピアキャロットから500メートルほど離れたところで耕治はあずさに追いついた。
 何とか右手であずさの左手を掴んだのである。
 しかしあずさは振り向くと、耕治の手を振り解こうともがいた。
「落ち着け。そして、話を聞いてくれよ」
 耕治は右手であずさの左手を掴んだまま、今度は自分の左手をあずさの右肩に置いた。
 そして、あずさの目をじっと見つめる。
「はぁ、はぁ、はぁ…………」
 あずさの抵抗も徐々に薄れていった。
「ここじゃ何だから、場所を移すか」
 あずさの息が整うのを待ってから、耕治は切り出した。
 まずは落ち着いた場所にいくのが先決だと判断したのである。

 美奈と哲弥は並んで駅までの道を歩いていた。
 美奈は普段、あずさと一緒に帰っており、あずさがいないときは耕治に駅まで送ってもらっている。
 あずさも耕治もいないときは、つかさや葵といった、寮に住んでいる誰かに駅まで送ってもらっている。
 しかし、今日は祐介と涼子以外では哲弥しか残っていなかった。
 祐介と涼子は残業のためピアキャロットに残っている。
 美奈は一人で帰ろうとしたのだが、祐介が哲弥に送ってもらうように言ってきたのである。
 そういうわけで美奈と哲弥は一緒に帰っていたのだが……思いきり気まずかった。
 あのようなことがあった後では無理もない。
 2人はピアキャロットを出てから一言も口を聞いてなかった。
 10分ほど歩いたところで、美奈が足を止めた。
 それに気づいた哲弥も足を止めて美奈に振り返る。
 しばらくの間、2人は黙って見詰め合っていたが、やがて美奈の方が口を開いた。
「美奈だって、怒ってるんだからね」
「…………………」
「答えによっては、哲弥くんのこと、許さないよ」
「…………………」
「どうして…どうしてあんなこと言ったの?」
 美奈は真剣な表情で哲弥に問いかける。今まで姉のあずさにさえ見せたことのない厳しい表情だった。
「………あずささんと美奈さんは、本当にご両親から愛されていたんですね」
 沈黙を保っていた哲弥がやっと口を開いた。

 耕治とあずさは公園のベンチに腰掛けていた。
 夜の公園に他の人影はない。
「どうして、坂巻君をかばったの?」
 あずさが切り出した。
「じゃあ、どうして日野森は坂巻に手を上げた?」
 耕治はあずさの問いには答えず逆に問い返す。
「だって、あんなこと、両親の悪口言われて黙っていられるわけないじゃない! あなたのときとは違う。あの子は、ペンダントのこと知ってて、それでもあんなひどいこと言った。許せるわけないじゃない!」
「……じゃあ、日野森は、坂巻の何を知ってるんだ?」
「え?」
 耕治の問いに、声を荒げていたあずさは虚をつかれたという顔になった。
「日野森たちの言葉が、無意識とはいえ先に坂巻を傷つけたか、傷に触れたか、ってこともあるんじゃないか?」
『あの子、わけありなのは確かだと思うよ』
 耕治は哲弥がピアキャロットで親に対する悪口を言ったとき、美樹子の言葉が頭に思い浮かんだ。そして、哲弥をはたこうとしたあずさの腕を掴んでいた。
 さらに、その後の哲弥の悲しそうな表情。
 耕治は哲弥を一方的に責める気にはなれなかった。
「……前田君は、坂巻君の何を知っているの?」
 あずさは少し考えた後尋ねた。
「俺にもわからない。でも、話を聞いてみるべきだと思う。あいつが何を抱えているのか。どうしてあんなこと言ったのか。それでもし、坂巻がただの意地悪であんなこと言ったんだったら、俺もあいつをぶっ飛ばしてやるさ」
「うん………」
 あずさが頷いた。その表情は穏やかだった。
「さ、帰ろうぜ。駅まで送るよ」
 耕治がベンチから立ちあがり、あずさに右手を差し出した。
 あずさは少し躊躇した後その手を握り立ちあがった。
 そして、耕治はあずさが立つのを確認すると手を離した。
「あ……」
「どうした?」
「ううん、何でもない」
(本当に、前田君、あなたって人は…………)
 あずさはゆっくりと歩き出した。この時間を少しでも長く過ごせるように、ゆっくりと。

 美奈と哲弥は再び歩き出していた。
「嫉妬だと思うんです」
「嫉妬?」
「あずささんと美奈さんのご両親は、既に亡くなられてるんですよね?」
「うん」
 あずさも美奈も哲弥の前で両親が他界しているのを話したことはない。
 ピアキャロットでの会話の中で両親の話が過去形になっていたところからの哲弥の判断である。
「もういないのに、笑って思い出を話せるあずささんと美奈さんを見てると、何だか無性にイライラしてきてきて、気がついたらあんなこと言ってて……」
 そこまで言うと、哲弥は口ごもった。
 美奈は両親との思い出を振りかえってみた。
 確かに、今は両親のことを笑って話せるようになっている。
 10年以上という年月もあるが、何よりも思い出の中の日々が幸せに彩られていたせいだった。
「哲弥くんの両親は?」
「………キャロットでの言葉通りです」
 美奈は哲弥がピアキャロットで言ったことを思い出した。
『親にとって、子供は自分の所有物』
『親は子供を育てるのではなく、子供を飼いならす』
「そうだったんだ……」
「でも、言っていいことじゃないですよね、あんなこと」
 今度は哲弥が足を止めた。
 そして美奈も足を止めて哲弥に振り返る。
「すいませんでした」
 哲弥が頭を下げた。
 10秒ほどそのままの姿勢でいた後、顔を上げた。
 美奈の表情は、先ほど見せた厳しい物ではなく、優しく包み込んでくれるようなものになっていた。
「美奈の方こそ、ごめんね。哲弥くんの気持ち、わかってあげられなくて」
「そ、そんなこと。おれが話さなかっただけだし」
 予期せぬ美奈からの謝罪に哲弥は慌てた。思わず顔を背ける。
「それと、これは美奈からのお願いなんだけど……あずさお姉ちゃんとも仲直りしてね。哲弥くんのこと、美奈があずさお姉ちゃんに伝えておくから」
「………はい」
 哲弥は顔を背けたまま返事をした。
 その姿が、美奈にはとても小さく映った。
 哲弥はまだ15ということもあるが、高校生ではかなり背の低い部類に入る。
 だが、このときの美奈には彼が小さな子供のようにも見えた。
「哲弥くん」
 美奈はゆっくりと哲弥の元に歩み寄る。そして――――。
「え?」
 両手で哲弥の右手を握り締めると胸の前に持ってきた。
「無理しないでね」
 哲弥の手を握ったまま、美奈は話し続けた。
「哲弥くんの抱えているものを理解することはできないけど、耕治さんも、あずさお姉ちゃんも、ううん、ピアキャロットのみんな、哲弥くんの仲間なんだから。えっと、だからね、その…………」
 美奈は先に続ける言葉が思い浮かんでこなかった。
「ありがとうございます」
 それでも美奈の言わんとしていることは伝わったのか、哲弥は微笑んで礼を言った。

 耕治は寮の自分の部屋に戻ってくると、ベッドに横になった。
 あずさを駅まで送る際、彼女の歩調に合わせてゆっくり歩いていたためかなり遅くなってしまった。
 それでも今日のうちに哲弥と話をしておきたくて彼の部屋を訪ねたのだが、まだ帰ってなかった。
 TRRRR……TRRRR……
 しばらく横になっていると、電話のベルが鳴り響いた。
 耕治はだるそうに体を起こすと電話に出た。
「はい、前田です」
“耕治さんですか? 日野森美奈です”
「あれ、美奈ちゃん。どうしたの?」
“夜分遅くすいません。でも、今日のうちに今日のこと、耕治さんに伝えておきたくて”
「今日のことって?」
“美奈、あの後店長さんに言われて哲弥くんと一緒に帰ったんです”
「そ、そうだったんだ。でも、何で店長さんはそんなことを?」
 あの後で美奈と哲弥を一緒に帰らせるというのは、耕治にはよい選択だとは思えなかった。
“店長さんは言ってました。『話を聞いてあげてくれ』って”
「それで、美奈ちゃんはどうしたの?」
“美奈も、哲弥くんのことは許せませんでしたけど、話を聞いてみたんです。そしたら……”
「そしたら?」
 少し黙ってしまった美奈に対し、耕治は先を促すように彼女の言葉を反復した。
“哲弥くん、お父さんやお母さんの、いい思い出がなかったみたいなんです。あずさお姉ちゃんや美奈に嫉妬して、あんなこと言っちゃったんだろうって”
「そうだったんだ」
 美奈の言葉は耕治の予想を肯定するものだった。
“その後、哲弥くんは美奈に謝ってくれて、美奈の方からも謝って、仲直りすることができました”
「そうか。よかったよ。あ、あずささんの方は?」
“あずさお姉ちゃんにも哲弥くんのことは話しました。きっと、明日には仲直りできますよ”
「うん、そうだね。いろいろありがとう」
“そんな。美奈はお礼を言われるようなことしてないですよ”
「ううん。美奈ちゃんのおかげだよ」
“そうですか? 何だか照れくさいです”
「…………………………」
“もしもし、耕治さん?”
「え? あ、ああ、ごめんごめん」
“どうしたんですか?”
「あ、いや、その、何だか急に美奈ちゃんが大人に思えちゃって」
“美奈、もう大人ですよぉ”
 美奈の声が拗ねたような声に変化した。
「あはは、そうだったね。それじゃ、もう切るね。おやすみなさい」
“はぁい。おやすみなさい”
 がちゃ
「ふぅ」
 耕治は電話を切ると一息ついた。
「やっぱり、今日のうちに話しておかないとな」
 そう呟くと、哲弥の部屋に行ってみた。

 ピンポーン
 インターホンを鳴らすが誰も出ない。
「まだ帰ってないのかよ。何やってるんだ?」
 耕治は呟きながら、外に視線を移した。
 時刻は現在午後10時半を回ったところ。
 外灯以外にも、かなりの部屋の窓から明かりが漏れている。
「とりあえず駅前まで行ってみるか」
 耕治は決意を固めると、部屋に戻ってコートを羽織り駅の方へ歩き出した。

「寒い」
 闇の中を吹き付ける北風に思わず声を出してしまった。
 もっとも声を出したところで暖かくなれるわけでもないが、気分の問題である。
「くっ、覚えてろよ坂巻」
 耕治は寒さへの苛立ちをとりあえず哲弥にぶつけた。
 駅前までの途中に哲弥に会えると思っていたが、彼の姿はなかった。
「おっ」
 住宅街から駅前に抜ける所にラーメンの屋台が止まっていた。
(ラーメンか、って、今は坂巻のことが先決だよな)
 そう言い聞かせて屋台を通り過ぎたときだった。
「耕治さん」
 耕治が自分を呼ぶ声に振り向いてみると、屋台ののれんから哲弥が顔を出していた。
「坂巻……」
「夜のお散歩ですか?」
「こんな寒い中するかっ!」
 耕治は哲弥の問いに答えながらのれんをくぐり、彼の隣に座った。
「えっと、しょうゆラーメン」
 何も注文しないわけにもいかなかったので、とりあえずスタンダードなものを注文した。
「で、どうしたんですか?」
「坂巻を探しに来たんだよ。今日のこと、今日のうちに話しておきたくてな」
「あ……えと、その……」
 哲弥はばつの悪そうな顔をすると耕治から視線を逸らした。
「ねぎラーメンお待ち」
 そのとき哲弥の前にラーメンが置かれた。
「さてと、じゃ、お先にいただきまーす」
 哲弥は助かったと言わんばかりに割り箸を割ると、ラーメンを食べ始めた。
「さっき美奈ちゃんから電話があったよ」
 耕治はしばらく哲弥を黙ってみていたが、やがて切り出した。
「……そうですか」
 哲弥はそれだけ言うと、再びラーメンに箸をつけた。
「坂巻のこと、話してくれた」
 耕治が哲弥の方をチラッと見たが、哲弥は何も言わずにラーメンをすする。
「前にミキも言ってたんだ。坂巻、何かわけありなんじゃないかって。坂巻――――」
「もう、いいじゃないですか」
 哲弥が耕治の言葉を制した。
 耕治が哲弥の方を向くと、哲弥は箸を置いて、わずかな笑みを浮かべながら耕治を見ていた。
「美奈さんから聞いたんでしょう、おれのことは。明日、あずささんにも謝ります」
「そうか。でも日野森は強情だからなぁ。一度へそを曲げると厄介だぞ」
「うっ。ま、まあ、美奈さんがその辺のことは何とかしてくれるんじゃないかと」
「そうだな。今日の美奈ちゃんなら大丈夫か」
「しょうゆラーメンお待ち」
 耕治の目の前にもラーメンが置かれた。
 それからしばらくは2人とも無言でラーメンを食べていたが、哲弥のどんぶりに麺がなくなったのを確認すると、耕治が口を開いた。
「何かさ、さっきの美奈ちゃんからの電話のとき、美奈ちゃんが急に大きく思えたんだよな」
「耕治さんにとって、美奈さんってどんな人なんです」
「う〜ん、可愛い妹、って感じだったな」
「美奈さん、きっと誰かさんに追いつこうと一生懸命なんじゃないですか?」
「そうだな」
 やっぱりね、という表情を浮かべていた哲弥だったが、耕治のこの一言に意外そうな顔をした。
「美奈ちゃん、姉の日野森から大切にされてきたからな。自分もそうありたいって思ってんだろうな」
 しかし耕治が続けた言葉にため息をついた。
「あの、替え玉1つ、このバンダナのお兄さんに」
「お、おいっ!」
 耕治が取り消すまもなく、耕治のどんぶりに麺が追加された。
「何すんだよ」
「それ食べて反省してください」
 食って掛かる耕治を哲弥はスープを飲みつつ受け流した。
 そのとき、女性の声がした。
「あれ? 耕治に坂巻君じゃない」
 2人が声のした方を振り向くと、そこにいたのは部屋着にどてらを着こんだ美樹子だった。
「こんばんは、篠原さん」
「ミキ、どうしたんだよこんな時間に」
「今日は徹夜で原稿を仕上げようと思って、ちょっと腹ごしらえにね。チャーシューメンお願い」
 耕治の問いに答えながら、美樹子は席に腰掛け注文した。
「じゃ、おれはもう食べ終わったんで、先に帰ってますね。お休みなさ〜い」
 気を利かせるつもりか、哲弥は寮へと帰っていった。
「そうそう、坂巻なんだけどさ」
「え?」
 哲弥の姿が見えなくなってから耕治が切り出した。
「ミキの勘、当たってたよ」
 耕治は今夜ピアキャロットで起こったこと、美奈から電話で聞いたことを簡潔に美樹子に説明した。
 その間に美樹子のチャーシューメンもでき、食べながらの会話となった。
「ふ〜ん、そうだったんだ」
「でも、ま、何とか万事解決といきそうだ」
「何とか、ね。ねえ、耕治は坂巻君のこと、どう思ってる?」
「どうって、仲間だと思ってるけど」
「じゃあ、あずさちゃんや美奈ちゃんのことは?」
「そりゃあ、仲間だろ」
「じゃあ、私のことは?」
「う〜ん、おもしろい友達、かな」
「そ、そう……このバンダナ男に替え玉1つ」
「おいっ!」
 またもや耕治のどんぶりに麺が追加された。
「何でこうなるんだよぉ」
「自分の胸に訊くことね」
 ぼやきつつも3人前の麺を食べる耕治に美樹子は冷たく言い放った。
 結局耕治は美樹子、さらに先ほど料金を払わずに帰宅した哲弥の分も含めてラーメン3杯分、替え玉2玉分、計1800円という予期せぬ出費をすることになった。


 翌日、ピアキャロットに出勤した哲弥とあずさは、仕事前に事務室に2人きりとなった。
「昨日は、ごめんなさい」
 まず、哲弥があずさに謝罪した。
「私こそ、ごめんなさい。ミーナから話は聞いたわ。坂巻君は――――」
「もう、いいんですよ」
 先を言おうとするあずさを哲弥は制した。
「そう」
 2人は微笑みあった。それは和解が完全に成立したことを意味していた。
「……昨日ね、前田君に言われたの。『日野森は、坂巻の何を知ってるんだ?』って」
「耕治さんですか………そういえば、その、ペンダントの中身なんですけど」
 哲弥がそう言ったとき、あずさの表情が変わった。
「見たの?」
「はぁ、その、拾ったときに開いてたもので。ふ、不可抗力ですよ」
「あ、これはね、まだ私たちそういう関係じゃないから、そうなってから写真を入れようと思ってて」
「あずささん、墓穴掘ってますよ」
 弁解しようとした哲弥だったがあずさの方が取り乱したので却って冷静になった。
「まぁ、あくまで予定なんですね」
「だからぁ〜」
「でも、耕治さんのことは諦めた方がいいんじゃないですか?」
 ぽかっ
「何であなたにそんなこと言われなくちゃいけないの!」
 取り乱していたあずさだったが、哲弥の大きなお世話な言葉に対し、彼を1発殴ることで正常に戻った。
「うぅ〜、だって」
「だって、何?」
 あずさは鬼のような形相で哲弥を問い詰める。
 ガチャ
 そのとき、廊下へと通じるドアが開いて耕治が入ってきた。
「よっ、坂巻に日野森」
「あっ。耕治さ〜ん、あずささんがいじめるんです」
 哲弥は素早く耕治にすがると泣きまねをして見せた。
「何ぃ! 日野森、後輩イビリなんて感心しないな」
 耕治もその意図を察したのか、哲弥の頭をなでながらあずさをとがめた。
 耕治も、あずさの方を振り向いた哲弥も目が笑っている。
「あんたたちねぇ〜!」
「「ひぃぃっ」」
 背中に炎が見えるくらいのあずさの気迫を前に、耕治と哲弥はすくみ上がった。
 ……………………。
 ……………………。
「それじゃ、今日もがんばろうね〜」
 あずさは笑顔で手を振るとフロアに行った。
「耕治さん、あずささんて、本当に怒ると恐いですね」
「ああ。よく覚えておけよ」
 ガチャ
「あら、耕治さんも哲弥君も、どうして頭を抑えてるんですか?」
 事務所に入って来た早苗が2人に尋ねた。
「ええ、ちょっとね」
「この店でやっていくために重要なことを1つ学んだんです」
「はあ……」
 早苗には2人の言っている意味がよくわからなかった。
「あれ、早苗さん、もう帰るの?」
 早苗の服装に目を止めた耕治が尋ねた。
「ええ、今日は早番だったのでもう上がりなんです。それでは、また明日」
「「お疲れ様でした〜」」
 2人は手を振りながら早苗を見送った。
「さて、俺たちも行くか」
「はいっ」
 耕治の声に哲弥が元気よく続いた。

「どうやらうまくいったようだね」
 フロアの様子を見ていた祐介が、レジにいる涼子に話しかけた。
 フロアにいる耕治、あずさ、美奈、そして哲弥は昨日のことを引きずっている様子は微塵もなかった。
「美奈ちゃんに感謝かしら」
 涼子が言った。
 昨日の夜遅く祐介の家に美奈から電話があった。哲弥のことと、仲直りできそうだという報告だった。
 そのとき、2人組のお客がやってきた。
「いらっしゃいませ。って、留美じゃないか」
「やっほ、お兄ちゃん」
 2人のうち、長い髪をポニーテールにした20歳前後の女性が祐介に挨拶を返した。
 彼女、木ノ下留美は祐介の2つ下の妹である。
「こんにちは」
 留美と一緒に入ってきた女性が挨拶を返した。こちらは10代後半といったところか、留美と比べると幾分幼い顔立ちである。
「あ、紹介するね。『桐谷梢』ちゃん。留美の高校時代からの友達だよ」
 留美が紹介すると、梢が祐介に向かって頭を下げた。
「へえ、留美の後輩か」
「同い年ですっ」
 祐介の言葉に梢が頬を膨らませた。それがまた彼女を幼く見せる。
「あ、失礼しました。留美の兄の祐介です。いつも妹がお世話になっています」
 祐介がお決まりの(?)挨拶をした。
「いえいえ。あの、祐介さんがこのお店の責任者ですよね?」
「はい、そうですけど」
「今日、坂巻哲弥は来ていますか?」
「え? はい、来てますけど」
 梢の口から予想外の人物の名前が出た。
「では、後ほど3人でお話をしたいのですがよろしいでしょうか?」
「君は、坂巻君の知り合いですか?」
「はい、親戚の者です」
「そうですか。えっと、双葉君、いいかい?」
「ええ、こちらは大丈夫ですから」
 祐介は側でキャッシャーをしていた涼子に一応の確認を取った。
「では、後ほど。とりあえずは食事を楽しみますので」
「それでは、席に案内します」
「お兄ちゃん、何かしこまってるの?」
「うるさいっ、お客様なんだからもてなさなくちゃダメだろ」
 留美がはやし立ててきた。
(う〜ん、あの梢って娘、どっかで見たような……誰だったかしら?)
 涼子は3人の背中を見送りながら考えていた。

「あれ〜、留美さん、どうしたの?」
「こんにちは、つかさちゃん」
 留美達のテーブルにオーダーを取りに来たつかさが留美を見るなり嬉しそうな声をあげた。
「今日、留美は休みだったからね。友達の梢と一緒に来たの」
「初めまして、つかさちゃん。ここには前から来たいと思ってたからね。今日留美っちに連れて来てもらったの」
「留美っち?」
 梢の留美の呼び方につかさは首をかしげた。
「あはは、梢は留美のことをそう呼ぶんだよ」
 留美が苦笑いしながら説明した。
「ふ〜ん、そうなんだ」
「留美っちからつかさちゃんの話はよく聞いてたよ。昔の自分みたいだって」
 それから3人がしばらくお喋りに興じていたところに、哲弥がやって来た。
「つかささん、いつまでも話しこんでないでオーダーを……留美っち」
 ぽかっ
 留美が立ちあがって哲弥の頭を拳骨で小突いた。
「あんたはその呼び方で呼ぶなって言ってるでしょ」
「あれ、留美さんと哲弥ちゃん、知り合いなの?」
「ええ、ちょっと。うぅ今日3発目」
 哲弥が頭を押さえながら言う。
「元気そうね、哲弥」
「え?」
 梢に話しかけられて、哲弥はようやく彼女に気づいた。
 彼の立っている位置からはほとんど死角になっていたので今まで気づかなかったのである。
「こ、梢おばちゃん、何で?」
 ぽかっ
「その呼び方やめろって言ってるでしょ」
「うぅ、実際戸籍上はおばさんじゃないか」
 さすがに1日4発はきつかったか、哲弥は少し涙目になっていた。
「私はまだ20歳よっ。あんたとは5つしか違わないわっ」
 実際梢は高校生でも十分通る顔立ちである。
「ま、いいわ。今日は哲弥に話があって来たから」
 梢は仕切り直した。
「話って何だよ?」
 哲弥が何か不満そうに尋ねる。
「ま、それは後でゆっくりと。とりあえずは腹ごしらえね」

「ねえ、前田君」
 フロアにいた耕治はあずさに声をかけられた。
「どうしたんだ、日野森?」
「あそこのテーブルなんだけど」
 あずさが指差したのは、留美と梢がいるテーブルだった。
「留美さん、来てたんだ」
「そうじゃなくて、留美さんと一緒にいる女の人」
「あの人がどうかしたのか」
「ほら、坂巻君が持ってた写真の女の人よ?」
「あ……」
 耕治は言われて何となく思い出した。その写真を見たのは歓迎会の夜1度きりだったうえに、ほどなくして葵たちの手にかかって酔いつぶれてしまったためよく覚えてはいなかったのである。
「う〜ん、言われて見ればそんな気も」
「覚えてないの? まったく、あんなに写真を見てデレデレ〜ってしてたくせに」
「うるさいなあ」
「むっ、うるさいとは何よ」
「余計なこと言うなよ!」
「本当のことじゃない!」
「あずさお姉ちゃんも耕治さんも、こんなところで喧嘩しちゃダメですよ」
 いつの間にか口喧嘩になってしまったところへ美奈が割って入ってきた。
 あずさと耕治が我に帰って周囲を見渡すと、客からの視線が痛かった。
「「……………」」
 2人は赤面しつつもそれぞれ仕事に戻っていったのだった

 食事の後、祐介、哲弥、梢の3人は事務所へと入っていった。
 一方事務所へ通じるドアの廊下側には、つかさと留美がいた。
「留美さんて、哲弥ちゃんと知り合いだったの?」
「うん、梢の家に遊びに行ったとき、何回か会ったんだ」
 つかさと留美はドアに耳を当てながら会話していた。
「うーん、よく聞こえないね」
 留美がぼやいた。
「何やってるのかなぁ、2人とも」
「「え?」」
 背後から聞こえた葵の声に2人が振り向くと、そこには葵、あずさ、耕治がいた。
「あ、こ、これはね、あははははー」
 つかさが笑って誤魔化そうとした。しかし――――。
「ドア越しの会話には、これよ」
 葵が、どこに持っていたのか聴診器を取り出した。
「葵さん、何でこんなの持ってるんですか?」
 あずさが尋ねる。
「こんなこともあろうかと、準備しておいたのよ」
 4人は呆れるほかなかった。
「みんな、哲弥クンの彼女のこと、興味ないの?」
「彼女?」
「あら、つかさちゃん覚えてないの? ほら、哲弥クンが持ってた写真の人」
「あ……」
 葵の指摘につかさはようやく気づいた。つかさも歓迎会の時は酔っていたので覚えていなかったのである。
「彼女? 坂巻クンは梢の甥だよ」
「「「え?」」」
 留美の突っ込みに葵、あずさ、耕治の3人は固まった。
「梢は坂巻クンのお母さんの妹で、17歳離れてるんだって」
「さ、サザ○さん以上ですね」
 耕治が妙なところで感心する。
「ってことは、禁断の恋ってこと?」
 葵の言う通り、叔母と甥は結婚できない。
「う〜ん、とにかく聞いてみよっか」
 留美の音頭に、耕治とあずさは直接耳をつけて、つかさは紙コップ、葵と留美は聴診器をドアにつけて事務室の会話に聞き入った。
“しょうがないか。義兄さんと姉さんには私から何とか言っとくから”
 まず聞こえてきたのは梢の声だった。
 どうやらあらかた話はついてしまったらしい。
“う、うん”
“じゃあ、約束通り、高校は卒業しなさいね”
“う、うん。ホントにありがと。何から何まで”
“ま、いいってこと。それでは祐介さん、今後ともよろしくお願いします”
“いえいえ、こちらこそ”
 ここで会話は途切れ、足音が聞こえてきた。
「あ、出て来ますよ」
 あずさが真っ先に気づいた。
「みんな、散るわよっ」
 葵の号令に5人は一斉にドアの前から散っていった。
 そのころフロアでは…………。
「あずさお姉ちゃん、みんな、どこ行っちゃったんですかぁ?」
 残された美奈が孤軍奮闘していた。

 その夜、哲弥の部屋にて。
「で、何で宴会になってるんですか?」
「まあまあ、気にしない気にしない。ここが1番人が入れるからね」
 哲弥の問いは葵に一蹴された。
「おまけに、何で梢姉ちゃんに留美さんがいるわけ?」
「ん〜? いたら悪い?」
「キャロットを出るとき葵さんに誘われてね。留美っちが参加しようって言うもんだから」
 2人はビールを飲みながら答えた。
 一方その向かい側では――――。
「あずさお姉ちゃんも耕治さんもひどいです」
「ごめんね、ミーナ」
「いや、その、つい、ね。ごめんよ美奈ちゃん」
 梢と哲弥が事務所で祐介と話していたときフロアに涼子と2人きりにされたことに対して、美奈がふくれていた。
「美奈も仲間に入れてほしかったです」
「「え?」」
 美奈はあずさ達が仕事をしていなかったことよりも、自分が仲間はずれにされたことの方にふくれていた。
「はぁ」
 周囲の状況をひとしきり見渡した後、哲弥はため息をついた。
 ピアキャロットの閉店後、葵の提案により半ば強引に宴会が開かれることになった。
 メンバーは、部屋の主である哲弥、発案者の葵の他、耕治、あずさ、美奈、涼子、つかさ、さらに留美、梢の計9人と言う大人数のものとなった。
 哲弥の部屋はほとんど何もない状態なので9人が集まっても何とかスペースは取れた。
「と・こ・ろ・でぇ、事務所で祐介さんと何話してたの?」
 葵が哲弥と梢にに尋ねてきた。葵にとってはこの話を聞くことが本日宴会を開いた最大の目的だった。
「それは……」
「話したっていいんじゃない?」
 口篭もる哲弥を梢が促した。
 それぞれ思い思いに騒いでいたメンバーも、いつの間にか哲弥の方に視線が集中していた。
「実は…まあ、簡単に言ってしまえば、俺、家出してきたんです」
「は? 家出?」
「まあ、坂巻君の年頃って、親が鬱陶しくなるものなのよね」
 問い返す耕治。分析する涼子。
「そんなんじゃないです。俺の家、まあ、それなりの家で。俺の進むべき道は生まれたときから既に決められていて、そんな生活が前から嫌だったんです。それで、高校までは行ったんですけど」
「我慢できなくなって家でしてきたってわけです」
 途中からは梢が引き継いだ。
「『親は子供を育てるのではなく、子供を飼いならす』、坂巻君はそんな育てられ方をしてきたのね」
 あずさが昨日の哲弥の台詞を復唱した。
「そういうこと。もっとも、焚きつけたのは私なんですけど」
「どういうこと?」
 つかさが質問する。
「私は姉さんがお嫁に行ったとき一緒に引き取ってもらったんですけど、窮屈な暮らしが嫌になって。高校の時に無理を言って、それからアパート暮らしをさせてもらってるんです。それで、哲弥はよく私のところに相談したり愚痴を言いに来てたってわけです。留美っちと会ったのもそのころです」
「うんうん。そうだったね」
 留美が頷いた。
「まあ、そんなある日、哲弥がもうこんな生活嫌だって言うから、だったら私みたいに家出でもしちゃえば? って言ったら、この子、ホントに家出しちゃいまして」
「そうだったんですか。でも、哲弥くんはどうしてキャロットに来たの?」
 美奈が質問する。
「前に留美さんと梢姉ちゃんが話してるとき、留美さんが勤めてるピアキャロットの支店の中杉通り店は近くに寮があってアルバイトの人も入ってる、って言ってたのを思い出して、当分はそこにいようと思ったんです。留美さんがオーナーの娘さんだと知ったのはつい最近ですけどね」
「ふ〜ん。で、結局今日は何を話したの?」
 葵が尋ねる。ようやく話が戻ってきた。
「私は哲弥がピアキャロットの寮に入ったことは電話で聞いてました。私自身、あまり大きく考えてなかったので、そろそろほとぼりが冷めたんじゃないかと思って――――」
「連れ戻しに来たんですね?」
 涼子の言葉に梢は頷いた。
「ええ、留美っちに場所を訊いたら、せっかくだからということで一緒に来てくれたんです。そして哲弥を連れて帰るつもりだったんですが――――」
「結局はやめたと」
「そういうことです」
 ドア越しに盗み聞きした会話から推測した葵の言葉を梢は肯定した。
「私が思ってた以上にこの子は覚悟してまして。この子の家出は思い付きじゃなくって本当に決意したものでしたから、もう少し様子を見てみることにしたんです」
「というわけで、その、これからもよろしくお願いします」
 梢が哲弥の方を叩きながら言うと、哲弥は一同に挨拶をして頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくな」
「がんばろうね」
 …………。
 …………。
 耕治が、つかさが、この場にいる全員が哲弥に暖かい言葉をかけた。
「ありがとうございます」
 哲弥が本当に嬉しそうに礼を言った。
「ところで、哲弥ちゃんと梢さんって、付き合ってるの?」
 もう1つ葵が聞き出そうとしていたことをつかさが先に訊いてきた。
「「は?」」
 哲弥と梢が間の抜けた声を出した。
「哲弥君、梢ちゃんの写真、持ってたわよね〜?」
 葵がニヤニヤしながら言う。
「それに、確か1番信じられる人って言ってなかったっけ?」
 あずさも乗ってきた。
「それは……親に締め付けられてたおれの味方になってくれたのは梢姉ちゃんだけだったから、そういう意味で、おれにとっては誰よりも信頼できる人なんですよ」
 哲弥はあずさの問いに先に答えた。
「あの写真はね、哲弥が家出するって言ったときに私が持たせたんです」
「はぁ? どういうこと?」
 予想外の梢の答えに葵は面食らった。
「先ほど話した通り、哲弥の決意をあまり大きく考えてなかったので、何かあったときに写真でも見ればすぐに戻ってくるんじゃないか、って思ったんです」
 写真のことは梢が説明した。
「な〜んだ、そういうことだったんだ」
 つかさが少しがっかりしたように言った。
「紛らわしいな」
 耕治も呆れたように言った。
「耕治さんに言われたくはないですね」
「どう言うことだよ?」
 哲弥の反論の意味がわからず耕治は尋ねる。
「篠原さんって彼女がいるのに必要以上に女性に愛想振り撒いて」
 ぴしぃっ
 周囲の時間が一瞬凍りついた。
「ホントなんですかぁ、耕治さん?」
「美奈ちゃん、俺にも何が何だか……」
「ひどいよ、耕治ちゃん!」
「いや、つかさちゃん、これはね……」
「そうなんだ。前田クン、もう恋人いるんだ」
「留美さん、誤解ですってば」
「「…………………………前田君」」
「日野森に涼子さん、そんな目で睨まないでください」
 たちまち大混乱になった。
「ねえ、坂巻君、篠原さんって?」
 葵は哲弥の方に尋ねてきた。
「え? 篠原美樹子さんですよ。よくピアキャロットに来るじゃないですか」
「で、耕治クンと美樹子ちゃんが付き合ってるって誰から聞いたの?」
「篠原さんからですけど」
「ふ〜ん。そういうことね。はいは〜い! みんな、落ち着いて!」
 葵はすべてを理解し、なおも耕治に食い下がっている女性陣をなだめた。
「何よ葵ちゃん」
 留美が不機嫌そうな顔で振り向く。続いて他の4人も葵の方を向いた。
「どうやらね、坂巻君が美樹子ちゃんに担がれたみたいなのよ」
「どういうことなの?」
 つかさが尋ねる。
「美樹子ちゃんがね、何も知らない坂巻君に、自分は耕治クンと付き合ってる、って言ったのよね?」
 葵が哲弥に振った。
「そうですけど、違うんですか?」
「違うって」
 尋ねる哲弥に、半ばボロボロになった耕治が答えた。
「そうなんだ、また美樹子さんなのね」
 あずさがトーンを落とした声で言った。普段から美樹子にやり込められているあずさだったが、これはかなりこたえるものがあったのだろう。
「うぅ〜っ、ミキさん、許せなぁ〜い」
「そうですぅ」
「ふっ、留美を怒らせたね」
 つかさ、美奈、留美も続く。
「ふふふ………」
 涼子も低い声で笑っていた。
「何だかおもしろいところね」
 様子を見ていた梢が哲弥に話しかけた。
「あはははは……」
 哲弥はどう応えていいのかわからずとりあえず笑った。
「でも、あの耕治って子、ちょっといいかな」
「ライバル多いよ」
「みたいね。留美っちがよく話してたし」
 哲弥は梢と話しながら、なおも混乱の続く場を、どこか楽しそうに眺めていた。


「ねえ、耕治は?」
「耕治は、今日は厨房にいます」
「そうなんだ。ねえ、呼んで来てくれない?」
「あいにくと厨房の方も忙しいので、申し訳ありません」
 ウェイターとして美樹子のテーブルに来た潤は、美樹子の頼みをやんわりと断った。
「ねえ、ここんとこ私が来るとさぁ、いっつも耕治が休みだったり他のシフトだったりしない?」
「そんなことないですよ。ご注文は?」
「えーっと、Bランチ。飲みものはコーヒーで」
「かしこまりました」
 潤はメニューを復唱するとテーブルから離れた。
 その様子を見ていた美奈とつかさが互いに、うまくいった、というサインを出していた。

「あら、耕治さん、またですか?」
 厨房に強制連行されてきた耕治を早苗が出迎えた。
 耕治と美樹子の交際疑惑事件(?)以来、ピアキャロットのウェイトレス達は美樹子への対抗手段として、美樹子と耕治をピアキャロットで会わせない手段をとった。
 耕治がフロアや外にいるときに美樹子がやって来たのを確認すると、素早く耕治を厨房に隔離する。
 そして美樹子が帰るまで、耕治は厨房で仕事をすることになるのである。
 耕治は一度、こんなことでいいのかと涼子と祐介に尋ねたのだが、あっさりと許可されてしまった。
「すいませんね、早苗さん」
「いえ、私は耕治さんが来てくれて助かってますよ」
 早苗にとっては耕治が厨房に来てくれる時間が増えたので思いがけない役得となったのだった。




次回予告
つかさ:きゃる〜ん、つかさだよ。
    ねえ、ピアキャロットの制服って可愛いよね。ボクも大好きなんだ。
    でも、あの制服を1番先に試着するのって誰なんだろう?
    留美さんは違うって言ってたし、モデルさんが試着してるって話も聞かないしね。
    はっ、まさか、オーナーが自分で着てるとか。
    オーナーにはそういう趣味があったなんて。うぅ〜。
    次回、Muchos Encuentros 第4話『やばいぜ』。お楽しみに。
    はぁ……なんでも、男のロマンらしいよ。
留 美:やっほ、つかさちゃん。
つかさ:留美さん、ボク、キャロット辞めるよ。
留 美:えっ? どうしたの?
つかさ:もうあんなところで働けないよ。
    キャロット辞めて、つ○くさんのプロデュースでアイドルデビューするんだ。
留 美:(あんなところで働けない? まさかお兄ちゃん、つかさちやんを………)
祐 介:やあ、留美、来てたのか。
留 美:こぉの犯罪者ぁぁぁ! 天誅!
 どか! ばき! ぐわしっ!


あとがき
 こんにちは、最近のプロ野球では日本シリーズよりも各チームの新戦力補強に目を向けている笛射駒です。
 第3話は2週間ほどで仕上げる予定でしたが、別の用が入ってしまい、結局延びてしまいました。
 今回の実験。美奈の母性を書いてみること。
 彼女は子供キャラと扱われがちですが、あえてやってみました。
 哲弥に関しては説明不足の感はあったと思います。
 その点は後のエピソードでも小出しでやっていくことになるでしょう。
 とりあえず彼が前面に出るのは今回までで、次回からは新展開です。
 ピアキャロット2のお姉さん、涼子と葵がメインのエピソードになります。
 祐介の奥さんも登場します。
 でも誰にするかはまだ決めてません。
 それでは、お付き合いいただきありがとうございました。

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